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リサジュー図形と技術

リサジュー図形は技術評価の観測手段として有用である。オッシロスコープで3次元(時間と平面)図形として観測できる技術手法である。先日、記事整流回路とリサジュー図形が見られていた。そこに図5.スイッチングとリサジュー図形(e.i)がある。電流ベクトルiの描くリサジュー図形は6角形の頂点の6点を示す断続のリサジュー波形となる。その直流側の負荷は平滑リアクトルLが在るため、直流電流は一定値となる。三相交流電流波形は方形波である。その為電流のリサジュー図形が6点のみになり、6角形の辺は見えない筈だ。瞬時に6点にジャンプ移動する筈だから。今回リサジュー図形の意味を理解するのに参考になるかと少し追加して置きたい。この三相全波整流回路で、負荷がリアクトルL=0で、抵抗のみの場合は電源側の電流も波を打つ

変動波形となる。この場合の瞬時空間ベクトルのリサジュー図形で、電流ベクトルi に変化が現れる。その時のリサジュー図形を示す。a、bおよびc相の電流瞬時値ia、ibおよびicの値から図のように6角形の頂点に臍のような軌跡が現れる。

 

 

 

 

 

 

この電流ベクトルリサジュー図形に似た波形が在る。pq理論のリサジュー波形を見つけて (2014/11/21)の写真②に似た波形が在る。この写真波形は、後に空間瞬時ベクトル解析法と交直変換器への適用 (2011/10/30)と言う研究会資料になった基である。この研究会資料のp.77~p.79 の3次元軌跡図はリサジュー図形である。電力系統監視システムとして有効な手法と考えた。電力系統の状態を瞬時監視手法として生かされる筈だ。系統の瞬時アドミッタンス値と言う捉え方は余りなかった手法と思う。しかし、諸般の事情によりもっと大事な『静電界は磁界を伴う』の物理学基礎概念への方向転換になり、大学の講座性も工業高校と同じような気分で意識なく、研究能力の欠落かと、人権侵害の中に居るとは知らず、非常識の立ち位置から居場所も無く頓挫した。昭和62年、63年に電磁界理論研究会で、 電磁エネルギーの発生・伝播・反射および吸収に関する考察(EMT-87-106) と 瞬時電磁界理論の実験的検証とその意義 (EMT-88-145) を発表した。それはパワーエレクトロニクスの電力部門の講座に所属する内容ではなかった事を後で理解したが、無我夢中の夢の中のこと。 考えてみれば、昭和39年から、新潟県教育委員会はじめ、採用説明会と事務の取り扱いを一度も受けた経験が無かった。共済組合の加入手続きも書類に記載し印鑑の捺印など、一切した事も無かった。しかしそんな中で30年、50年以上の思考で、不可解な電荷の物理学の本質に辿りついた。研究者の端くれとしての責任と社会への貢献の一部は果たせたかと。

電気工学とリサジュー図形としてはピタゴラスの定理とオイラーの公式そして電気ベクトル (2017/01/15) 、ソーヤータワー回路の謎 (2016/07/19) さらに励磁電流とは? (2019/04/14) および変圧器-物理学解剖論- (2011/09/13)などを過去の記事から拾っておく。

pq理論と瞬時空間ベクトル。そのリサジュー図形を理解するには少し専門的な意味を理解する必要があろう。三相交流瞬時空間ベクトル (2017/04/07)  および単相瞬時空間ベクトルと瞬時値 (2017/03/04) が参考になるか。三相交流に瞬時虚電力qのベクトルを導入したことで、電気ベクトル空間座標が時間と合わせて4次元座標となった。

空間ベクトルと回転軸

世界は何故回る。それは回転(rotation)が世界の構成原理だからだ。その理由を求めても自然(神)は教えてくれない。ただそこに在る姿を素直に受け止めるだけしかできない。何故地球が自転と公転をしているかに答えられるだろうか。太陽系が何故独楽のように惑星質量空間分布の統一体として回転しているか。その質量エネルギー(mc^2^[J])と運動エネルギー(Σ (mv^2^+Iω^2^)[J] 1/2は?)の空間分布構造を計算出来たら回転現象の秘めた原理が観えるかも知れないのだが、それは遠い夢。回転現象の意味は決して万有引力に因っても理解できない。世界が回転で成り立っているから万有引力説が解釈法の一つになっているだけだ。

空間とベクトル 微分演算子にローテーション (rot S )と言うベクトル計算概念がある。空間に『エネルギー流』のベクトルS がある時、その微分演算式が回転流平面に対して垂直の空間ベクトルを表現する計算式だ。それは回転流の半径分布密度に因る空間軸ベクトル量を示す。微分回転演算は電磁気学での偏微分式にも使われるが、軸ベクトルとしての意味は余りないかもしれない。また、子供の頃によく独楽(コマ)を回した。漢字の通り回転体が一人で楽しんでいるような世界に見える。コリオリの力と言う説明があるが、その理解もなかなか難しい。この回転と言う自然現象は世界の根源に在りながら、人が気付き難いものかも知れない。独楽が何故立つかには、その回転『エネルギー流』に自然の秘めた本質があるのだろうと思うが、具体的な数学表現式は見えない。瞬時電力理論も平面(エネルギーの熱平面とも見られる)に垂直な虚軸で定義した処にその有効な意味が隠されていると観たい。瞬時虚電力と名付けた電力概念は系統の電源と負荷間を還流している回転『エネルギー流』の時間微分と看做せる。空間ベクトル解析は虚軸で評価する技術概念の意味を理解することが、電気現象の抽象的解釈概念ではあるが、空間ベクトル解析論への入り口として重要であろう。

虚軸の名称 独楽の心棒はその重要な意味を担っていると見て分かる。しかし、電気現象には従来の伝統的ベクトル解析法での複素平面における『虚数』の概念も同じ事であるが、その物理的意味は見て分かると言うものではない。三次元ベクトル座標の立体空間で考える瞬時電力理論も、平面に垂直な回転軸が感覚的に在ると見える訳ではない。空間ベクトル解析法として有効なベクトル軸でありながら、直接在ると見えるものでないという観点から『虚軸』とした。勿論複素論の虚数( j= √ -1 )の軸と言う意味ではなく、空間ベクトル解析のスカラー積、ベクトル積の演算に因る計算手法がその電磁現象の本質的意味を理解するに極めて有効であるために導入したベクトル概念軸である。

自然現象と回転軸 先に挙げた独楽、災害の竜巻、瀬戸内海の渦潮等も自然の回転現象である。これらの回転現象に共通したものは回転の中心に軸があることだ。台風の目のように、中心軸は空洞のように周りのエネルギー流分布とは異なる特異な空間となっている。何も回転していないような中心軸が想像できる。回転独楽の極真の中心軸が回転していないように。北半球の台風や竜巻の回転方向は必ず上から見て反時計方向(衛星画像の)に廻る回転流になる(下から見れば時計方向)。台風の低気圧は中心軸が天空冷気(空気体積の収縮源即ち低気圧源)と海上面(高温度の高エネルギー“水蒸気高含有空気質量とそのエネルギー保有の”供給源)と繋がった空間構造を成して、その回転現象が安定した一つのエネルギー回転体のような存在を成す。竜巻(地上面の高エネルギー水蒸気膨張空気と上空の冷気に因る水蒸気体積収縮に因る上昇回転気流現象)は下から見れば、時計方向の回転エネルギー流体構造を成す。渦潮は上から見れば、やはり時計方向のエネルギー回転流体構造を成す。エネルギー流の回転が時計方向なら、時計の裏側に向けての軸エネルギー流となっている。右ねじの回転と進行方向の関係に在る。南半球はその逆に成っていると思うが、そうではないとの意見もある。海の潮流や渦にその様子は見える筈だ。その回転の方向性は地球の回転と球面に因るだろうと思うからである。地球を回している力の原因が何かが謎である。地球の上空は地球より早く回っている。謎こそ自然の魅力かもしれない。

回転軸の単位ベクトル 2次元平面座標上で回転運動を記述する時、その平面に垂直な座標軸の回転軸が重要な意味を担う。その三次元空間座標で、回転運動の回転角速度ωをその軸上のベクトルとする。回転軸の単位ベクトルnγ = [ × ]を決める。平面上の回転運動体mには軸ベクトルがある訳ではないが、回転角速度ωをその軸上の空間ベクトル ω = ωとすれば、回転速度vはベクトル積として図のように解釈できる。その単体の質点mの運動には、単に運動エネルギーを持った物の運動と言う点しか見えない。その質点には回転軸方向への運動を産む意味は見えない。しかし、回転円板や独楽などの運動平面上のエネルギー平面分布となると、少し様相が異なって見える。即ち軸方向性の力ベクトルの隠れた意味が見えてくる。

光伝播と空間ベクトル解析 Fig.1.の質点mがもし地球とすれば、その表面から光の短時間パルスを天空に放射した時、その光の軌跡をどのように認識するかを考えた図でもある。光は光源の運動速度には影響されないと認識する。その光が伝播する『光速度一定』と言う伝播空間をどのように認識するかが大きな問題であろう。地球は少なくとも2軸回転運動体と看做される。光の相対速度の意味を考える図にもなろうかと思う。電気現象が光速度伝播現象であることとの関連として意味があろう。

電気現象と回転軸(虚軸)ベクトル 電気現象や電気回路に見える回転軸がある訳ではない。台風などの意味とは異なるが、電気現象解釈に4次元(時間が1次元)空間ベクトルを取り入れると理解し易くなるだろう。しかも従来のベクトル解析での複素平面ベクトルと異なり、『虚数』概念の矛盾( j^2^=-1 に基づく混乱-ピタゴラスの定理ー)は取り除かれる。電力系統の送配電線路網は、その本質がすべて電線路内の空間を伝播する電磁エネルギーの光速度伝播現象である点で極めて効率的エネルギー伝送機能設備である。その『エネルギー』は勿論空間エネルギーで光と同じように金属導体によって制限されてはいるが、空間を伝播するのである。瞬時電力理論での解析手法の『虚電力』と言う概念が電圧・電流ベクトル平面座標に対して、その垂直軸の『虚軸』に定義した処に特異さがある。実際に電気回路に虚電力が在るのかと尋ねられれば、在るとも言えないし、無いとも答えられない。それは各相の無効電力に反映されるもので、各相無効電力発生の原因を『虚軸』の電気ベクトルとして定義した電力概念である。しかしその三相の各相無効電力は、過渡瞬時値でなければ、総和を採れば零となる。三相をまとめて見た時に『虚電力』の意味が分かろう。それを次の図に表現した。

電線路の空間エネルギー 三相電力線路には三つの「空間エネルギー」がある。瞬時電力理論での『実電力』と『虚電力』に関わる『エネルギー』と更に系統の電力規模を示す『電圧』に関わる『エネルギー』である。図では、『実電力』の赤色の流線で表示したエネルギー流と『虚電力』を意味する青色の回転流線で表示したエネルギー回転流の二つの「空間エネルギー流」がある。電気現象の最も基本的な認識として、捉えなければならない事がある。それが『電圧』の物理的原理である。負荷が無い、無負荷での電線路空間のエネルギー分布がどのように成っているかの認識である。無負荷であるから、電流が流れているとは言えない。それでも電線路の遠方終端でも瞬時に受電できる。それは電線路に『エネルギー』が電圧と言う意味の隠れた物理現象として存在するからである。『電荷』や『電流』でない『エネルギー』の電線路空間内での実在認識とその光速度伝播現象での解釈が必要である。図2は『エネルギー』を認識する事に因って、初めて電線路空間内のエネルギーの回転流としての『虚電力』の意味が分かろう。物理的には、決して『電荷』や『電流』での伝統的電気工学の技術概念に因る認識では無理である。電線路空間のエネルギー分布は電源から電線路末端まで、光速度に因る遅れを伴うが、空間エネルギーの供給に因る『電圧』として電力系統保持が成されているのである。その『エネルギー』の分布を図の緑色で示した。図の(2)は電線路の断面空間を示した。三相交流電圧の位相により、「空間エネルギー」の分布は電線路空間内を回るのである。この電圧エネルギー分布がすべてのエネルギー供給現象の基を成していると解釈する。負荷電力もその負荷点での電圧エネルギー分布の「空間エネルギー」を供給源とし、負荷が吸収した事に因るそのエネルギー欠陥を補償すべく次々と分布エネルギーを取り込みながら、その欠陥状態が電源側に光速度で補償しながら伝播するのである。定常負荷状態であれば、安定した赤色のエネルギー流で供給される。負荷変動の過渡状態は、電圧エネルギー分布に大きな欠陥状態が生じ、その光速度補償現象の伝播動作として系統に影響を与える。基本は電線路空間内の『エネルギー』分布が在ることに因って決まると見なければならない。『エネルギー』が光速度伝播と言うことの意味は、(3×10^8^)^-1^ [s]間に伝播する量が電線路の1[m]当たりの分布でしかない事で理解されるだろう。微弱な空間エネルギー分布でも光速度伝播と言うことで、極めて大きな送電電力となり得る。また図の(1)や(2)の電線路空間内の『エネルギー』現象を考えると、電気現象が空間ベクトル(技術概念の電流と電圧)の回転現象として、ベクトル解析手法の合理的な意味が納得できる。空間ベクトル解析ではインピーダンスよりアドミタンスが有効である。アドミタンスベクトルを虚軸上に定義することで、空間ベクトル解析にその意味が生きる。

むすび 瞬時電力理論の空間ベクトル解析の意味を少し広げ(リサジュー図形など)て見ようかと思い、その基本的物理現象を『エネルギー』でまとめた。ここまでの道程の電磁現象に対する解釈を進めて来た精神的な科学認識の支えが次の資料の写真に在る様な実験結果に負っていた。『電界』も『磁界』も『エネルギー』の解釈概念でしかないのだと言う電気現象の認識である。新世界への扉ーコンデンサの磁界ーの意味である。

瞬時電磁界理論の実験的検証とその意義 電気学会電磁界理論研究会資料 EMT-88-145 (1988-10)

瞬時電力算定式

本日の報告。瞬時電力理論は座標変換に因る空間ベクトルがその理解に必要である。しかし、その瞬時電力の『瞬時実電力』pと『瞬時虚電力』qは意外にも簡単な式で評価できる。

線間電圧・電流による算定式 実際の電線路の電気状態は線間電圧と線路電流で評価する。その一つの算定式を示す。

瞬時電力算定式 二つの線間電圧と二線路の電流のみから(1)、(2)式のように算定できる。

三相交流回路の瞬時電流分離

瞬時電力問答で瞬時電流分離を取上げた。その後三相瞬時空間ベクトルを、過去を振り返りながら再確認しようと考えた。しかし、単相交流回路現象でさえ、改めて気付くことが生まれる。単相瞬時空間ベクトルと瞬時値で回路電流の分離を考えた。この電流分離の解釈が三相交流回路に於いても同じ事であると分かった。それは瞬時電力理論のα―β座標の二相空間ベクトルの瞬時実電力、瞬時虚電力に関わる意味でもあった。二相空間ベクトル解説の前にそのことを報告する。

三相交流回路の電力

三相交流回路と電力 平均電力で言えば、図のように有効電力P[W]と無効電力Q[Var]で捉える。(注意)少し説明して置かなければならない事がある。一般的な電力ベクトル図では無効電力Qの値を誘導性で『負』容量性で『正』として取り扱うかの疑問がある。ここでの解釈では、誘導性負荷ではsinφが『負』であるから、Qは『負』として解釈しないと混乱するかもしれない。負荷変動の瞬時電力でない場合には、この平均電力で解釈すれば十分であろう。瞬時電力で解釈する場合は、三相の各瞬時電力の総和p=ea・ia+eb・ib+ec・icは瞬時実電力と言い、それは瞬時有効電力と瞬時無効電力の両方の電力成分を含んだものである。また瞬時無効電力は三相電圧、電流からは算定することが出来ない。三相各相の瞬時無効電力を検出することは瞬時電力理論によらなければ出来ない。瞬時虚電力と言う空間ベクトル概念を定義したことで初めて、各相の瞬時無効電力を算定できることになった。それは結局各相電流を瞬時有効電流と瞬時無効電流に分離することが出来ることが可能になったからである。負荷変動しない三相平衡定常負荷の場合で、瞬時電力理論の意味を適用すれば、三相有効電流と無効電流に分離することができる。三相交流電圧、電流(二相座標変換せずに)のみで有効・無効電流に分離してみよう。

瞬時実電力・瞬時虚電力表式 二相座標変換しないでの瞬時実電力と瞬時虚電力。

三相瞬時電力

三相回路電流の分離 電源電圧が三相平衡電圧の場合で、負荷も三相平衡定常負荷の場合には負荷電流を有効電流と無効電流に分離できる。

瞬時電流の分離 図ではa相電流iaの有効電流iap と無効電流iaqへの分離式を示した。ただし、sinφの符号は誘導性で負、容量性で正。

瞬時電力理論に因る分離

各相瞬時電流算定式 各相の電流を有効電流と無効電流に分離した表式である。有効電流は各相の電圧位相と同位相の電流であり、無効電流は電圧とπ/2だけ位相差の電流となる。単相回路での電流分離の手法がそのまま同じ方法で適用されることである。ただ、三相電圧・電流で算定する式に表現したが、元は二相座標変換の空間ベクトルの概念を書き換えただけである。ただし、Qは誘導性負荷では『負』である。それはsinφが『負』だから。

参考文献(*1)(*2)

 

参考文献

(*1)  赤木他、瞬時無効電力の一般化理論とその応用 電学論B103,p.483(昭和58-7)

(*2) 金澤 空間瞬時ベクトル解析法と交直変換器への適用 電気学会、電力技術研究会資料PE-86-39,P.71.

単相瞬時空間ベクトルと瞬時値

(2020/06/10) 追記。ここで取り上げる空間ベクトル解析はやはり電気工学の解析手法の話になる。電圧、電流を電気現象の解析手段の基礎概念としての取り扱いとなる。それはあくまでも科学技術論としての論法である。その意味は電気現象を電気物理として論理性を追究する科学論とは異なるものである。電気回路の物理現象は決して電圧と電流では、その論理性を持って解釈することは不可能である。何故なら、電気回路のエネルギー伝播現象は決して電線導体内には無関係で、その電線路で囲まれた空間しか伝播しないのであるから。オームの優れた法則も電気技術としての回路解析手法であり、自然現象としての物理的論理性はそこには無いのだ。しかし技術的回路解析にはとても優れた、貴重な手法である事に変わりはない。現在の電気回路現象に対する筆者の認識を一言述べさせて頂いた。

はじめに。 瞬時電力理論(pq理論)は三相交流回路に対してその威力を発揮する。当該理論は電力エネルギーの制御・補償で、スイッチング機能を伴うなど、絶えず瞬時変動する負荷に対して、その電気現象の意味を捉えるに欠かせない理論である。物理的には電荷に基づく電流は流れずと言いながら、ここでも電流の解説をしようとする。昔pq理論に基づいて、電流の微細制御を論じた論文「電圧型PWM変換器を用いた瞬時無効電力補償装置の動作解析と設計法」(電気学会)電学論B106,323(昭61-4)もある。この論文の意義は変換器の半導体素子のスイッチング動作限界を明らかにし、変換装置の設計基準を示した点にある。しかし瞬時電力理論は単相回路に対しては特別有用とは看做されていないだろう。単相では、三相回路での空間ベクトル積で定義される瞬時虚電力の概念が得られないからであろう。電気工学の学習でも、電気現象理解の初歩では、オームの法則から直流、単相交流回路と学習が進み、インピーダンスベクトルや電圧ベクトルの複素表現法によって電気現象解釈の目標に到達したと成るのじゃなかろうか。遥か昔の30年も前の学校現場での教育内容であるから間違っているかも知れない。もし教育内容が昔のままであるとしたら、三相交流での瞬時空間ベクトル解析法との隔たりが大き過ぎるだろうと懸念する。単相交流回路でも、瞬時空間ベクトル概念に依る解釈法を学習する必要があろうと思う。従来の複素ベクトル解釈法は負荷変動の無い、平均電力回路現象の理解を目的にした方法である。今回少し単相交流回路で、瞬時値に対する瞬時空間ベクトル解析法として理解に優れているだろうと思う方法を考えたので、『単相瞬時空間ベクトル解析法』を提案する。電気現象も瞬時空間ベクトルとしてみると芸術的に見えるから不思議だ。今電気現象をこのように感じるのも、いろいろの電気回路の中で起こる『エネルギー』の挙動に常に注意してきた結果のように思う。初めて電気回路の魅力に取りつかれたのは、1970年頃にパワーエレクトロニクスに出会ったからである。Principles of Inverter circuits  by B.D.Bedford ,R.G.Hoft の名著によって、電気回路技術の深さに興奮を覚えた。同時に電気理論に教育的矛盾のあることをこの頃に確信した。ファラディーの電磁誘導則とアンペアの磁束発生解釈の間の埋められない溝を何故誰も指摘しないのかであった。『磁束は電圧時間積分で決まる』その基本原理を!その意味を知ったのが『ロイヤーのインバーター』(静止電力変換回路の基礎(2)新潟県工業教育紀要第8号、このインバータで単相誘導電動機の速度制御を行った)である。この回路の動作原理を知れば、誰でも電圧時間積分の意味を理解できる。アンペアーの磁束発生原理はどこかに飛んで行ってしまう筈だ。これは物理学原理の根幹を問う問題でもある筈だ。伝統理論に偏り過ぎた理科教育はもっと技術に寄り添わなければ、存在意義が問われる筈だ。

単相瞬時空間ベクトルの要点。 単相交流回路の電気現象の瞬時の状況をどう捉えるかは殆ど論じられて来なかったのではないか。電源電圧が正弦波の場合だけに限って考えてみた。従来はインピーダンスベクトルに対して電流が流れた時、各負荷要素に掛かる電圧分担分を基本的考察の拠り所としていた。今回提案する解析論は負荷に対して、電流を電源電圧と同位相の成分と90度位相差の成分とに分離して考えた点が特異な観点である。その二つの瞬時電流の算術和は勿論回路電流の瞬時値に等しい。負荷が変動する場合、変動瞬時では電流は正弦波ではなくなるから、その過渡状態では解釈上でも分離は出来ない。三相瞬時電力理論とは違って、単相では過渡時に電流を分離する威力を発揮できないきらいはあるが、今のところ単相回路ではそれも止むを得ないと考える。ベクトルを扱う空間は4次元の抽象概念空間である。電源電圧が角周波数に従って一定速度で回転する電圧最大値のベクトルとして捉える。回転電圧ベクトルに対して電流は空間的な位相差を持ったベクトルとなる。

4次元座標と電圧ベクトル。 4次元座標は3次元の直交空間座標軸と時間から成る。この空間は実在空間とは異なることは当然である。電線路導体の空間は実在空間であるが、この座標は電気現象を解釈するための抽象化した空間である。三相伝送線路の瞬時電力理論の三相ー二相座標変換への橋渡しの意味を込めて、α軸とβ軸で構成した。

vec-1%e5%ba%a7%e6%a8%99%e3%81%a8%e9%9b%bb%e5%9c%a7%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab座標と電圧ベクトル。 三本の直交した座標軸α軸、β軸およびγ軸から成り立ち、その単位ベクトルをnα,nβ,nγ とする。電圧ベクトルe は最大値Emの正弦波で、時間の原点ωt=0を-nβ方向とする。電圧ベクトルはα軸とβ軸の成す平面上を反時計方向に回転する。この電圧ベクトルeの回転速度はαβ座標面に垂直なγ軸上に電源周波数の回転角速度ベクトルωを定義することにより決まる。単相交流回路には電圧が回転する現象がある訳ではないが、その電圧波形が正弦波の場合では、正弦波の周期性から電気現象を空間ベクトルの回転として捉えると電気特性を理解し易くなるだろうと思う。その座標と回転基準ベクトルとなる電圧ベクトルの解釈基準を示した。

瞬時電流ベクトルと瞬時値。 エネルギー消費負荷の内部インピーダンスは外部からは分からない。特性不明の負荷の電気現象を知る手掛かりは電圧と電流の瞬時値しかない。その事から電圧と電流の関係を空間ベクトルとして認識しようと言う事である。電流の瞬時値を電圧同相分と直交成分に分離し、その関係を空間ベクトルとして表現した。

vec-2%e7%9e%ac%e6%99%82%e7%a9%ba%e9%96%93%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab%e3%81%a8%e7%9e%ac%e6%99%82%e5%80%a4瞬時空間ベクトルと瞬時値。 空間ベクトル値が計測できる訳ではない。計測できる瞬時値はα軸上に下ろした垂線によって示された値となる。電圧瞬時値はeαであり、電流はiα が瞬時値として検出できるものである。計測できないが電流値i(電圧ベクトルeに位相差φで追従するベクトルiの値)を解釈上二つに分離した空間ベクトル上での電流ipは電圧瞬時値の位相に同相の瞬時有効電流になる。さらに同様な分離電流iqは電圧と位相π/2だけ異なる瞬時無効電流となる。電流の空間ベクトルについて、線路電流の瞬時電流ベクトルiは負荷特性によって決まる力率の位相φで電圧との関係が決まる。位相φは正弦波電流の場合の意味であり、単相回路の瞬時変動負荷に於いては電流ベクトル i は残念ながら確定できない。

瞬時電流分離の意義。 電流を瞬時有効電流ipと瞬時無効電流iqの二つの成分に分離することの意義は何か?確かに従来の抵抗とリアクタンスによる電気回路解析法に馴染んだ解釈法からすると、回路要素に依らない解釈が正しいのかと疑問に思うだろう。電圧と電流と言う科学技術概念量の魅力はほれぼれするものである。しかしその概念が、『電荷』と言う実在しない物理量によって解釈されることから、実際の電線路空間内に分布する『エネルギー』の自然の眞髄に気付かない事から来る、余りにも数式に厳密性で依存する科学理論が社会的な問題を含んでいないかと、それが気掛かりである。電線路近傍空間の『エネルギー』は電気現象の根底で、空間の空間定数によるインダクタンスやコンダクタンスの過渡的現象を大きく受けているのである。そんな自然現象の意味を数式で捉え切れるものではない。だから、前回の記事瞬時電力問答で疑問を呈した「Ri^2^の不可解」での関係で、瞬時有効電力との位相の差の問題に答えなければならなかろう。実際の負荷は抵抗とリアクタンスに厳密に分けられる訳でない。負荷は負荷空間全体が一体としてエネルギー処理に当たっているのである。だからこのエネルギーは抵抗分で、このエネルギーはリアクタンス分と分離することを実際上は厳密に分けなくて良いだろう。単相交流回路の負荷内で、リアクタンスに蓄えられた『エネルギー』が時間差を持って抵抗に消費される現象と考えれば、電流を二つの成分に分けて解釈しても何ら矛盾はない筈だ。『エネルギー』にとっては抵抗もリアクタンスも特別の差はないのだ。また電源から監視する技術面で見ても、電源側に影響するかどうかで評価すれば良い事であろう。だからと言って学習しないで良い訳ではなく、抵抗とリアクタンスの『エネルギー』に対する基本的特性の違いは十分理解していなければならない筈だ。この電流分離の意味を、前記事の具体例でもう一度確認したい。その前に一つ注意しておきたい。瞬時電流ipやiqの値が分離計測できる訳ではない。

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瞬時電力。 電気回路で計測できるのは線間電圧と線路電流である。その瞬時値を観測・計測するにも方法が必要だ。電圧は2本の電線に高抵抗(ほとんど電流が流れない程の抵抗値)か変圧器を繋いで、分圧電圧を利用する。電流の瞬時値はやはり電線に低抵抗(抵抗値ほぼゼロの電圧降下値)か変流器(CTと言う電流変成器)で測定するしかなかろう。制御回路では絶縁が基本だから、Tr.とCTが使われよう。その信号を波形観測機器で観測できよう。先のVec.2の空間ベクトルとの関係を示さなければならない。線路電流iは、i=iα(Vec.2のα軸上の成分になる)である。電圧vはv=eα(Vec.2のα軸上の電圧成分)の意味である。

%e7%9e%ac%e6%99%82%e6%9c%89%e5%8a%b9%e3%83%bb%e7%84%a1%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e5%8a%9b瞬時有効電力p_p・瞬時無効電力p_q

前記事瞬時電力問答では「Ri^2^の不可解」と疑問を取上げたが、同様にリアクトルの電力Lidi/dt[W]も同じ意味を含んでいる。ここでの電流iもVec.2のベクトル図では、電流i=iα(α軸上の電流)、電圧v=eα(α軸上の電圧)であることを了解して頂きたい。瞬時電力p=vi[W]は

p=v ip +v iq =p_L + p_R  [W]

と各瞬時電力の和で、電流分離による電力の和も各要素電圧による電力の和も当然ながら同じくpに等しい。当然ながら、無効電力も有効電力もその次元はワット[W]である。従来の電力理論で言う無効電力は瞬時値を論じてはいないから、平均値の無効電力はゼロワット 0[W]となり、単位[Var]で零ワットの意味を表記するのである。無効電力VIsinφ[Var]とその無用なエネルギー流の関わりの悪影響の大きさを表記するのである。ただし、V,Iは電圧電流の実効値であり、最低でも1サイクルの2乗平均の平方根値で算定する訳で、瞬時値としての捉え方はない。だから瞬時電力pの平均値はP=VIcosφ[W]となる。それは瞬時有効電力p_p=v ip [W] およびRi^2^[W] の平均値に等しくなり、無効電力分は結果的に、エネルギー量の評価量としては表面に現れないのである。だから無効電力評価単位を[Var]とする。電気工学を学ぶ初期の方がよく質問しているので老婆心いや老爺心で単位について説明を。なお電力の単位ワット[W]についても瞬時値表現としては意味に明確さが見えなくなるのだ。ワットは[W=J/s]であり、エネルギー量の時間微分値である。電線路空間を伝送する『エネルギー』の時間微分とはどんな概念と理解すれば良いか。電線路を伝送するエネルギーは送電端と受電端では距離が離れているから、たとえ光速度で伝送されるとしても、その離れた場所での空間のエネルギー分布は異なる。その事は電流についても、一本の電線であっても送電端と受電端の離れた点では等しくないのである。この辺の論になると所謂物理現象、電磁現象を論じる内容につながる。

電力ベクトル。

vec-3%e9%9b%bb%e5%8a%9b%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab電力ベクトル。 α―β―γ空間ベクトル場で単相交流回路の電力を考えてみた。従来は三相交流回路に対してしか瞬時電力(瞬時電力理論)を考えなかっただろう。その研究分野から離れて30年もたったから実際のことは知らないが。単相交流回路を4次元空間ベクトル場で、その電気現象の解釈を試みた結果、新しい電気工学ベクトル解析の一手法になろうかと思うので報告する。こんな基礎的な内容が学校教育の教科書の中味を探ると見えて来ると言う事が驚くべきことに思える。従来の電力ベクトル図では、有効電力P=VIcosφ [W]と無効電力Q=VIsinφ [Var]を直角三角形のベクトル図として解釈していた。Vec.3 の電力ベクトルでは、

有効電力p=2P=2EIcosφ =Em Im cosφ [W] 、

無効電力q=2 Q=2EI sinφ =Em Im sinφ [Var]

となる。有効電力の算定値pは平均電力Pの2倍値となるから、少し注意する必要があろう。無効電力までが三相交流回路の場合と同じように算定されることが不思議だ。勿論無効電力Q=q/2と言う電力が流れている訳ではないのだ。それは三相回路における瞬時虚電力と同じような意味を単相回路ベクトルの中に捉えることが出来ると言う意味で、新しい認識を得たと言えるのだろうか。なお、E(=Em/√2)およびI(=Im/√2)は電圧、電流の実効値である。

まとめと考察。 回路の瞬時電力pαはpα=eα・iα [W] で、有効電力と無効電力の両方を含む。このα軸上の電流iαは電流計で計る回路電流の瞬時値iである。vec.2のベクトル図で、iα=ip+iq であり有効電流分ipと無効電流分iqの両方を含んでいる。ここで論じた事をまとめる。

vec-4%e7%a9%ba%e9%96%93%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab%e3%81%a8%e9%9b%bb%e5%8a%9bVec.4 空間ベクトルと電力(sinφの正・負に注意)。 単相回路の瞬時空間ベクトルを三相回路の瞬時電力理論と対比してみよう。電力ベクトルとして瞬時実電力に対応させて、電圧・電流のスカラー積p=(e・i)を計算すると、図の(6)式のように単相電力P=EIcosφの2倍となる。それはα相とβ相の二相分を計算したことになるからである。α相の単相分を計算すると、pαは(5)式の通り、単相回路の電圧と電流の積の瞬時電力となる。平均電力P=EIcosφに対しての2倍周期の正弦波電力となる。次に瞬時電力理論の瞬時虚電力に相当するベクトル積[e×i]=[×]+[×]を計算すると、q=2Qと従来の電力ベクトルの無効電力分Q=EI sinφ [Var]の2倍値となる。単相回路の場合はこの虚電力に関しては余り意味があるとは言えない事が分かる。三相回路では、瞬時有効電力は電圧電流のスカラー積で得られるが、単相のα相電力pαは有効電力と無効電力の両方を含んでいるので、有効電力と無効電力に分離することは出来ない事が分かる。しかし今回の考察で、単相回路の電圧と電流及び負荷力率角φから、空間ベクトル図上で有効電流ipと無効電流iqに容易に分離できることが分かった。Vec.4 図のp_p の(8)式およびp_qの(9)式である。具体例を挙げておこう。

%e5%9b%9e%e8%b7%af%e4%be%8b%e3%81%a8%e7%9e%ac%e6%99%82%e5%80%a4具体例と瞬時値。 α相の単相回路で、電圧、電流の実効値およびその位相差角φが分かると、その回路の瞬時値は確定できる。『問題』波形図で、位相ωt=2π/3 の時の瞬時空間ベクトル図はどのようになるでしょうか。

単相回路を空間ベクトルで考える手法について論じた。電気工学学習での一つの解釈法になればと思う。一つ留意しておきたい。三相回路の瞬時実電力pとここで論じた単相回路の瞬時有効電力p_pおよびpαとの間の関係についてはまだ十分分かっているとは言えないかも知れない。

瞬時電力問答

昔瞬時電力理論について考えていた。なかでも『瞬時虚電力』と言う新しい電力解析理論の概念を論じた事もあった。しかし、電気理論の基礎になる『電荷』の意味が分からなくなり、更に電気現象の影を支える『光』について考えるには、余りにも有名なアインシュタインの『特殊相対性理論』の大きな壁が立塞がった。光の速度と空間特性 (2011/05/22) この記事は分かり難いので、光の相対速度と空間 (2020/06/08) に書き改めた。研究分野(電力工学)に縛られては到底無理な道であったとやっと分かった。
常識の壁 自分自身の中に育った常識さえも考えれば壁になっている。分かっている心算の事が誤りであったと気付く。昨日も電気抵抗の解釈で驚きを覚えた。

瞬時電力と無効電力 瞬時電力も無効電力もその基に在るのは『エネルギー』である。電力は計測できるが、計測できるからと言ってそれが物理的実在だとは言い切れない。科学技術量ではあるが。

%e7%9e%ac%e6%99%82%e9%9b%bb%e5%8a%9b%e3%80%81%e7%84%a1%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e5%8a%9b瞬時電力と無効電力 電圧が正弦波の電気回路でも電流が正弦波とは限らない。最近の様に電気製品に半導体素子が多く使われると殆ど正弦波電流ではない。図のような場合の、瞬時無効電力はどのように解釈したらよいだろうか。瞬時電力p=vi[W]は図のようになろう。その平均値が消費電力で、その平均値の値は1秒間の消費エネルギーを表してジュールとなる。それが電気量単位のワット[W=J/s]である。しかし、瞬時電力の中味には消費されるエネルギーの電力分とただ電源と負荷の間でのやり取りされるだけで消費されない電力即ち無効電力とがある。そのそれぞれの瞬時値を分離することが出来るだろうかと言うのが瞬時電力問答の主題である。単相回路の瞬時電力で、電圧電流からそれを分離することは不可能である。三相電力系統で初めて可能になる。その瞬時電力理論を理解するには、今までの電気回路理論では無理があろう。抵抗とリアクトルと言うインピーダンスベクトルの解釈ではおそらく瞬時電力は捉え切れない。

瞬時電力その意味

%e7%9e%ac%e6%99%82%e9%9b%bb%e5%8a%9b%e3%81%a8%e9%9b%bb%e6%b5%81瞬時電力と電流 電流は流れずと言いながら電流の話をする自己矛盾論お許しください。電気製品はテレビや冷蔵庫など多様である。電圧は正弦波であるが、電気製品の負荷は単純な抵抗とリアクトルの回路では決してない。その電流波形がどのようであるかは測れば分かろうが複雑であろう。②の様に電気回路要素で解釈することが出来ないのが殆どであろう。その時の負荷や電源の電気現象を解釈しようとすれば、測定できる情報は電圧と電流しかない。しかも瞬時値となれば、電流計や電圧計では測れない。時間の流れの無い一瞬の値が瞬時値である。それは一連の瞬時値の流れとして計測できるから、電気回路制御が出来ると言う科学技術の不思議である。実際の負荷回路の状況は知ることが出来ないから、電圧と電流の瞬時値で検出する。②のように、電気回路理論では要素抵抗とリアクトルに掛かる電圧に分解して解釈するが、実際は無理である。従って、③のように電流を分解して、有効電流irと無効電流ixに分解して解釈したらどうかと考えて見る。そのように電流を分離できれば、電圧とその電流との積で、瞬時の有効電力pr と瞬時無効電力pxを解釈することが出来る。瞬時電力p=viは有効電力と無効電力の両方を合わせて含んでいる。元々無効電力と有効電力に瞬時電力としては何の違いもないのである。瞬時電力が有効か無効かはその平均値としての『エネルギー』の消費に関してどのような意味を持っているかで区別する概念でしかないのだ。負荷側に供給したエネルギーが電源側に戻れば、差引消費する『エネルギー』がなかったとなり、その電力が無効電力と言う意味になるだけである。ただ電源と負荷の間で無駄な『エネルギー』のやり取りが生じた事で、その電力分を無効電力と言うのである。電気負荷には無効電力を含まなければならない必然的理由があるのだ。モーターには必ずコイルと鉄心があるように。

瞬時電力と電気抵抗 瞬時電力とはその瞬時における負荷側での消費電力と解釈することが一般的であろう。電気抵抗はその瞬時の電力を消費すると考えていたが、そうではなかった驚きに気付いた。実際の具体的数値で考えてみよう。

ri2%e3%81%ae%e4%b8%8d%e5%8f%af%e8%a7%a3Ri^2^[W]の不可解 電源電圧実効値200V(最大値282.8V)、抵抗とリアクトルの直列要素の単相回路で見る。抵抗とリアクトル値が同じで、瞬時電流i(最大値10アンペア)が有効電流と無効電流に分離できる。瞬時有効電流irと瞬時無効電流ixが図のようになる。この二つの瞬時電流の解釈が瞬時電力理論の理解に必要になる。瞬時電力理論では、瞬時有効電力と瞬時無効電力が、三相回路で実電力と虚電力と言う概念につながる。この図から、瞬時有効電力prは負荷抵抗要素の電力Ri^2^を意味している訳ではないことになる。負荷抵抗の機能はエネルギー消費だけの機能であるとの認識では理解できない事を示している。Ri^2^[W]の瞬時値と瞬時有効電力pr[W]に位相のずれがある。ただ、このずれは三相回路での総和では負荷変動がなければ、全く差がない一定の直流電力となる。

方形波電圧と瞬時電力 最近はインバーター回路が多く使われる。最も単純なインバーター電圧波形が方形波である。そんな波形での瞬時電力はどう算定できるかを考えてみた。

%e6%96%b9%e5%bd%a2%e6%b3%a2%e9%9b%bb%e5%9c%a7%e3%81%a8%e7%84%a1%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e5%8a%9b方形波電圧と無効電力 回路解析は微分方程式を解く事から始まろう。しかし、残念ながら考えたが電流の式を解けなかった。厳密な方程式を解く方法でないが、指数関数での電気現象から解いた結果が次である。

%e6%9c%89%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e6%b5%81%e3%80%81%e7%84%a1%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e6%b5%81電流解 スイッチング時間T0=5[ms]での結果である。有効電流ir および無効電流ixの数値グラフは正解ではなかろう。その訳は抵抗での消費電力からの算定結果であるから、前のRi^2^の不可解に通じる意味で自信がない。『問』瞬時有効電流及び瞬時無効電流を算定してみてください。さらに瞬時無効電力はどのような式になるでしょうか。

三相交流回路の瞬時電力 三相電線路の線間電圧と線路電流からの瞬時電力の算定式だけを参考に示しておく。

%e5%86%99%e7%9c%9f446瞬時電力理論の電力算定式で、三相ー二相変換しない、三相電圧と電流からの直接の瞬時実電力と瞬時虚電力の算定式である。ただし、この瞬時虚電力とは瞬時無効電力のようなエネルギーの流れの瞬時値を算定している訳ではない。三相では無効電力の総和値は零になる事を付け加えておく。この式が電圧、電流の瞬時値のみから算定できる瞬時電力式である。この式の意味を次の記事で、空間座標上で考えてみましょう。

空間とベクトル

眼前に広がる空間は実在空間である。その空間をどのように認識するかは易しいようで結構難しいかもしれない。その訳は、有名な科学者が五次元空間とか、多次元空間とかの科学論を話題にするが、どう考えても時間の次元を加えても4次元空間しか理解できないのだ。科学者の論理は難しい。そこには抽象化の論理展開が原因に成っているからなのかもしれない。5次元空間は実在空間と異なる抽象化空間だから自分には理解できないと諦める。

4次元空間(実在空間と抽象空間) 3本の互いに直交する直線の座標軸に時間の次元を加えて、眼前の空間に展開される自然現象を捉えることが出来る。ただその4次元空間と言っても、その認識する人の意識が同じとは言えないように感じる。観測者としての立ち位置をどう捉えるかという大きな問題が潜んでいる。『認識する空間』とは何かに答えなければならない問題を抱えているのだ。さらに、自分にとっては4次元空間でも実在空間と抽象空間の二つがある。

%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab%e3%81%a8%e7%a9%ba%e9%96%93%e5%ba%a7%e6%a8%99ベクトルと空間座標(②の図で、sinφは負になる) 図のi j k nα nβ nγ などはすべて単位ベクトルであり、大きさ1の方向性を規定する重要なベクトルである。先ず4次元の実在空間がある。眼前の空間は光に満ちている。光は日常生活そのものを照らす実在である。物理学理論を持ち出さなくても、日常感覚に溶け込んでいる。光は直進する。その速度は毎秒30万キロメートル進む。ただそれだけの意味の光の性質を元に、眼前の4次元空間に光の運動を考えてみよう。例えばビーム性の高い『レーザーポインタ』のような光源を取上げよう。その指向性の高い光パルスを1秒間真上に向けて放射したとする。その時の光の軌跡はどのように描かれるかと言う単純な問題である。その光のビームは連続的な一本の線を描くであろう。その線が直線であるか曲線であるかを問うのである。こんな余りにも素人らしい日常生活者の視点からの疑問がとても科学論には重要であると考えるのだ。光は1秒間に30万km進むから、光の軌跡もその長さは30万kmになる。さて光が直進すると言う意味はどのような意味なのだろうか。その時、光の進む空間をどのように認識するかが基本的概念になる。眼前の実在空間は光に対してどのような意味を持つのかである。自分が立っているのは地球である。地球は太陽を中心にして公転しながら自転している。太陽がどのような速度かは分からない。しかし、地球の速度を公転で考えても大よそ毎秒30kmと言われている。この地球の速度と光の速度との関係を実験で確認しようとしたのが二人の科学者マイケルソンとモーリーである。実験では上手く行かなかったが、考え方は正しいのだ。上の図の①は光が曲線を描くことを示した。光は光の放射源から空間に放射された途端に、放射源から完全に自由な光自身の空間伝播特性に従ってそのエネルギー伝播現象を示す。そのように光が直進することで決まる空間を光規定空間座標と考える。地球の空気層ではその媒体の特性の影響を受けるが、基本的には放射源の運動には支配されない。この問題は、光の相対速度を認識するかしないかの問題であり、認識する一人ひとりの解釈の問題である。光は『相対速度』でしか観測されない。その実験的証明は、レーマーの木星の衛星観測からの光速度算定実験に示されている。実験室での光観測実験では、光源と観測者が相対的に同一速度で運動しているから、光の相対速度は打ち消されて、観測できないのが普通の伝播現象である。やはり、実験に基づいた科学論を大切にすべきである。

電気工学と空間座標 空間とベクトルと言う標題で記事にした訳は、瞬時虚電力と言う電力理論の意味を分かり易く解説できたらとの願いで、考えている内に解釈の空間座標の意味を明らかにして置こうと思ったからである。『静電界は磁界を伴う』と言う実験結果の座標は実在空間座標になろう。コンデンサのギャップ空間の磁場を検出するのは普通の実験空間である。しかし、瞬時電力理論で展開する座標は独特の抽象化された、実在しない空間概念である。上の図②のように、一般に科学技術論で取り扱う空間座標は抽象化座標が殆どである。その抽象化された概念が専門家にとっては日常的にありふれた概念であるから、市民が理解するには無理がある事を余り意識せずに過ごしている。数学式で表現されると途端に難しくなる。数式で表現できる概念は、たとえ長い文章になっても日常用語で説明できる事が科学研究者の責任であろう。そんな意味で瞬時虚電力とは何じゃろうかとここに来て悩んでしまった。空間瞬時ベクトル解析法と交直変換器への適用は30年程前にまとめた論説であるが、なかなか良く出来ていると自分で書いていながら、読み直しても考えてしまう。世間知らずの無鉄砲人生の闇に翻弄されていた頃の思い出を乗せた論文資料だ。その意味を解説するに抽象化する科学技術の空間座標の意味を高校生にも何とか理解してもらえないかと思っての準備である。街なかの配電線路を見て、その中に在る自然現象としての『エネルギー』の振る舞いが日常感覚で何となく分かるようになればと思っている。

振り返って 図①の光の伝播ベクトルと空間の意味は、自由空間における光の伝播特性と周波数 日本物理学会講演概要集 第53巻第2号第1分冊 p.87 (1998)、光伝播時間算定のための瞬時空間ベクトル解析法 同上第54巻第1号第1分冊 p.77(1999) 2軸回転系の光伝播特性 同上 第55巻2号1分冊 p.77 (2000) にある。さらにこの関係でお恥ずかしい思い出がある。1999年7月中頃と思うがNatureに投稿したことがある。Instantaneous Space Vector Analysis of Light Energy of Root Element in Free Space 受付番号KO9198 とあるが、その当時に小杉文部大臣がロンドンに出向いて、この論文の処理に当たっていたように思う。その意味が理解できないが、natureからはregretと返送されて来た。これは光の相対速度を論じたもので、すでに光の速度と空間特性(2011/05/22)に示した。

ピタゴラスの定理とオイラーの公式そして電気ベクトル

ピタゴラスの定理は中学の算数の内容らしい。直角三角形の三辺の長さの間の関係の定理である。現実世界の寸法に照らし合わせて理解できる日常生活と結び付く、簡便で有用な定理だ。それに比して、オイラーの公式は複素平面と言う現実の世界には存在しない、見る事の出来ない数学特有の公式である。『虚数』は実在しない世界の概念である。電気工学でも、多く虚数は使われている。ウイキペディアにオイラーの公式が図形で説明されている。

%e3%83%94%e3%82%bf%e3%82%b4%e3%83%a9%e3%82%b9%e3%81%a8%e3%82%aa%e3%82%a4%e3%83%a9%e3%83%bcピタゴラスとオイラーの式の比較。 オイラーの公式の図はWikipediaの図形を参考にした。ただ、sin φに虚数記号 i (赤色文字で)を書き加えた。ピタゴラスの定理の各辺はすべて実数で、現実世界の数量を対象にした数式である。同じ直角三角形でも、オイラーの場合は一辺が虚数である。直交座標軸の縦軸が実数でなく虚数である。虚数はこの実世界に存在するものでなく、あくまでも非現実世界の表現量である。私は非現実的な数が現実の世界認識に有用な数であるとは理解できないのである。具象平面のピタゴラスの定理に対照してみたい。

z=e^iφ^ ,  x=cos φ ,  y=i sin φ

として、z,xおよびyの間にピタゴラスの定理を適用してみると、『虚数の2乗は-1』の大原則から、

|e^iφ^|=√(x^2^+y^2^)=√(cos^2^φ-sin^2^φ)

となる筈だが、虚数の原則は無視する不思議な数学的論理即ち、

y^2^=+sin^2^ φ

と決してマイナスに成らない論理が理解できないのだ。具象平面の現実世界にオイラーの公式の複素平面の数を対照すると、直角三角形の斜辺は他の二辺より大きいと言う実在世界認識に反する結果をもたらす。だからその時は虚数の原則は無視する論理に成るのかと思う。

『オイラーの公式の現実世界表現への価値はどこに在るのか?(命題)』と高等数学論理に弱い頭で考えてしまう。

さて、上の命題はそのままとして、実際に虚数記号(iあるいはj)は電気工学で多用される。折角であるから、平面2軸座標における電気工学の虚数利用上の特徴を考えてみよう。

%e8%99%9a%e6%95%b0%e3%81%a8%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab虚数とベクトル。 電気工学では虚数記号に j を使う。負荷インピーダンスベクトルZ=R+jωL と複素数表現をする。実軸の実数に抵抗Rとその垂直ベクトルを虚数で捉えてjωLと表現する。インピーダンスZと抵抗RおよびリアクタンスX=jωLの間に、直角三角形の図形評価で捉える。この回路では、R=ωLの場合として考えている。この場合の電圧を時間軸に展開して示せば、e 、e_rおよび e_lのように三つの正弦波形となり、その電圧ベクトルも虚数記号jに因って、インピーダンスベクトルと全く同一の直角三角形でベクトル図が描かれる。これらの直角三角形はその三辺の大きさは、ピタゴラスの定理の関係で捉えることに決まっている。だから虚数記号jによる複素平面解釈の電気工学理論が何故[j^2^=-1 の原則]が成り立たないのに伝統として確立しているのか。何故虚数jでなければならないのか。虚数の原則に気付くと、誤って合成インピーダンスZ=√(R^2^-(ωL)^2^)で有ったかな?と考えてしまう。

具象と抽象。 とかく科学技術理論はその世界(専門家)特有の概念によって共通理解の常識の世界認識で解釈している。上の例の正弦波波形表現も時間軸で展開して理解し易いように表現したものであろう。しかし実際にその状態は見ることは出来ない抽象化の表現であろう。オッシロスコープによる波形観測は掃引輝点の軌跡の残像(蛍光)に依るからだ。

%e5%85%b7%e8%b1%a1%e3%81%a8%e6%8a%bd%e8%b1%a1具象と抽象。 電圧もその瞬時値の連続として脳で認識する訳である。時間軸に展開した表現法は理解し易くしているだろう。しかしそれも一つの抽象化表現法と看做せよう。その抽象化の解釈法に虚数表現が取上げられよう。特別に虚数表現にしなければならない理由があるのだろうか。直交座標の取上げ方で合理的な方法があるのじゃなかろうか。

回転ベクトルと単位ベクトル。 実数軸と虚数軸での複素平面表現法に対して、実数の現実世界の数の概念の範囲で、電気工学に使われる便利な直交座標を考えてみよう。なお、この単位ベクトルについては空間ベクトル解析と単位ベクトルで述べている。

%e5%9b%9e%e8%bb%a2%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab回転ベクトル。 単相交流回路で、電源電圧が正弦波とする。一つのやはり抽象化表現法ではあるが、電源電圧が時間的にどのような状態に在ると考えるかの具体例を考えた。互いに直交した二つの『単位ベクトル』naおよびnb を平面に設定する。

スカラー積は (nanb)=0 、ベクトル積は[na×nb]=nc   と平面に直交した単位ベクトルnc に成る。

上のように大きさ1の方向だけを決める単位ベクトルを設定することにより、平面上を回転する電圧ベクトルを表現することが出来る。電圧の平面上のベクトルe

e=Em(na sin ωt –nb cos ωt)

によって時間 t の経過に従って、電圧ベクトルの先端の軌跡が円を描く。オッシロスコープのリサジュー図形観測で得られるだろう。

電流ベクトル軌跡。 図の電流ベクトル軌跡は負荷変動があれば、その軌跡は複雑に変動軌跡を描くことになろう。一般には負荷変動が電圧波形の変動を生むから、電圧も円軌跡から外れるだろう。

電源電圧eを積分して- Em cos ωt をオッシロの縦軸入力(y)、電源電圧 e を横軸入力(x) とすれば円軌跡のリサジュー図形になろう。

奇妙な積分への疑問。 積分回路を通した信号は『時間t』での積分か、『角度ωt』での積分に成るのか?

この電圧円軌跡は後で、pq理論の瞬時虚電力での座標展開への予備的な意味を込めた。

電気工学理論の虚数概念に対する結論。 自然科学理論には様々な部門で虚数が使われているのだろう。電気工学理論では虚数記号に「j」が使われる。直角三角形の一辺を虚数で解釈する長い伝統によって電気工学理論は馴染み易い解析理論として定着している。上で論じたように、虚数は2乗によるマイナスの実数に変換される虚数論の原則との整合性で矛盾しているからと言うだけで、j記号の使用は悪いと言い切るのは浅はかであろう。直交したベクトル評価概念が電気工学理論として優れている事には間違いがない。ただ、実数軸と虚数軸で捉える表現法は虚数と言う実在物理量とは言い難い数であると言う点から、その二つの軸の物理量を共に実数とすれば合理的な論理展開で、伝統理論がそのまま生かせる。空間ベクトルの3次元座標の単位ベクトルをi 、 j およびk とするように設定すれば、何も虚数を必要とはしない。従って結論としては、[j]を単なる単位ベクトルと解釈すれば良い筈だ。

三相交流回路の負荷と無効電力

久しぶりに三相交流回路について考えてみる機会を得た。30年以上も昔に少し専門的に取り組んでいた電気現象の話でもある。今長い科学漫遊の末に辿り着いた、電線路上における『空間エネルギー』概念に基づく新しい電力系統解釈論とでも言うものかも知れない。電力技術論としての長い伝統のある電力理論に『瞬時虚電力』の意味を、その物理的(物理学的ではない)現象解釈を取り入れた教育指導法となろうか。三相交流回路の無効電力について考えてみたら、分からない事が多くあることに気付かされた。昔工業高校で、電気工学の授業準備をしていた頃のことを思い出した。黒板にどのような板書で図形表現をしたら子供達が分かり易いかと工夫を凝らした事を。皆さんはどのように無効電力の意味を解説しているかと検索してみた。私が疑問に思うことに答えている解説は残念ながら見当たらなかった。能力不足乍、少し元から無効電力の意味を考えてみようかと思った。

無効電力の不思議 電線路上のある点で負荷側の無効電力を測定しようとする。測定量は線間電圧実効値Vと線路電流Iおよびその電圧と電流の波形上に現れる位相差角度θのみである。それだけの測定結果によって無効電力は確かに算定は出来る。伝統的電力理論によって。しかしその物理現象を捉えようとすると、不思議にも捉えようがない事に突き当たるのだ。

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電線路の無効電力 無効電力は現実には無理であるが、負荷が一定で安定した特殊な場合に限定して、無効電力Q=√3VIsinθ[Var]と判断する。

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電力ベクトルと無効電力 電圧と電流の位相差に因って、電力の有効電力と無効電力を電力ベクトルとして直交三角形で解釈する。このように、ベクトル図形で、『電力円線図』などによって電力系統の状態を解釈する。しかしこの無効電力を計算で算定しようとすると?その事をまず取り上げて、無効電力の負荷要素のエネルギーの挙動まで調べてみようと思う。

%e4%b8%89%e7%9b%b8%e4%ba%a4%e6%b5%81%e9%9b%bb%e5%8a%9b

三相交流電力 以下の三相交流電圧はすべて、相電圧波高値Emの平衡電圧として考える。

(1)抵抗負荷

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抵抗負荷の電力 三相電力配線はその有効電力が一定値の直流電力に成ることにその優れた点があると言えよう。三本の電線路で囲まれた線路空間を通して一定のエネルギーが伝送されるのである。

(2)誘導性負荷 一般の無効電力の原因となる回路要素は負荷に含まれるインダクタンスである。そのインダクタンスLのみの負荷の電力を計算してみよう。

誘導性負荷の電力誘導性負荷の電力 インダクタンス負荷の三相電力を計算すると、その値は「ゼロ」となる。結局無効電力は電源側からは何も送って居ないのである。この事が良く認識しなければならない重要な点である。何も電力を送って居ないにも拘らず、電源側にとっては誠に厄介な電力成分となっているのである。電力零でありながら、系統への影響が大きいのだ。無効電力と言う電力は供給エネルギーの時間微分ではないが、電線路上に影響を及ぼす原因は『エネルギー』以外ないのである。電子による『電流』概念ではその本質に迫れない筈だ。電力ベクトル図では何となく理屈に合っているように思われるかもしれないが、それはあくまでも電気技術に基づく解釈法でしかないのだ。

(3)容量性負荷の電力 同様にコンデンサ負荷の場合も計算してみよう。

容量性負荷の電力容量性負荷の電力 三相電力が零に成るのは無効電力であるから当然な事であるが、その意味を考えて納得しておく必要があろう。いわゆる物の理屈(物理)として。

負荷の回路要素としてのエネルギーの振る舞い 前に単相回路については電気回路要素のエネルギー(数式と意味)で解釈を示した。三相回路ではまたエネルギーの相間での回転の意味を知っておくことも大切であろう。そんな意味を踏まえて『エネルギー』から三相の負荷の様子を眺めてみよう。

三相電線路空間のエネルギー

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三相電線路とエネルギー 三相電線路は地中ケーブル配線もあるが、電柱の市内配線や街外れの鉄塔が目に付く。三本の導線で電気(エネルギー)を配電している設備だ。未だ導線内を電子が流れてエネルギーを供給していると考える教科書の理論が支配的であろう。その電子論も少し考え直してみば、説明の付かない点に気付こう。電線の表面に強い電磁エネルギーの高密度空間ひずみが存在している。それはもし電線の中味をくり抜いて表面だけの中空電線にしても、殆ど同じ表面の電磁エネルギーひずみがある筈だ。電子が電線の中を流れると解釈するなら、電線の外に電磁エネルギーのひずみをもたらす原因が電子に因ると考えざるを得ないが、それならその歪みのエネルギーは電子が電線の外部まではみ出してエネルギーを広げていると言うのだろうか。送電線には傍に行くと『ジー』と言うコロナ放電の音がする。それは空気が電線の表面に電子の電荷が高密度で分布し、空気の絶縁破壊を起こしている放電現象と電気工学では解釈されている。その絶縁破壊を起こした『エネルギー』は電子の電荷がエネルギーに変換された現象と観るのだろうか。『エネルギー保存則』と言う物理現象の大原則を厳密に認識するなら、曖昧に過ごす訳にはゆくまい。『電荷』とは便利に理論上『エネルギー』に変換するものなのだろうか。コロナも光としてエネルギー放射されているのだ。その光の基は「何」が変換されたのかを理屈として明確にしなければならなかろう。言いたい事は、『電荷』など破棄しなければ、何時までも曖昧な電気理論が科学の矛盾を引き摺り続け、それで良いのかと言う事だ。『エネルギー』は電気だけでなく、すべて空間にその独立した存在なのである。熱なら物質に纏いついて。光なら自由空間を伝播する。だから配電線路や送電線路もその三本の電線の近傍空間を『エネルギー』を運ぶのである。導線はその道しるべの役目である。ただそのような自然現象の本質を科学技術として如何に巧みに利用するかを構築して来た先達の偉業は益々輝くものであろう。しかし教育としてどう取り扱うかが哲学的な視点で再構築されるべき時代に来たと言う事であろう。多寡が配電線路と眺めても、そこには深い意味が隠されている事を認識したい。

三相負荷要素とエネルギー 電気的要素は抵抗R、インダクタンスLそしてコンデンサCの三つである。実際の電気回路にはアーク炉や負荷断続や複雑な負荷が繋がれて、その電気現象は瞬時的変動の連続状態を呈する。その苛酷な電力需要の要求に対応するには補償装置や安全対策が講じられている。先ずはそれぞれの単独の回路要素負荷についてそのエネルギーの振る舞いを理解しておく必要があろう。

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三相交流回路のエネルギー 負荷をStar結線で考える。LとCはエネルギー貯蔵機能要素と看做される。しかし抵抗Rはそのエネルギーの意味を考えると、少し複雑に思える。電力はエネルギーではなく、エネルギーの消費率であるので、捉え難い点がある。モーターの仕事を思えば、回転体には誘導性のエネルギー貯蔵機能があり、仕事として消費されるエネルギーは仕事率の動力ワットである。その動力が抵抗の機能に相当するものである。先ずはLとCについて、その貯蔵エネルギーの振る舞いを尋ねてみよう。

電圧と位相 負荷印加電圧の位相で要素のエネルギー貯蔵量がどのように変動するかを調べるその基準を示す。

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三相電圧と位相 三相電圧のa相電圧ea=Em sin ωt 、b相電圧 eb=Em sin (ωt-2π/3)、c相電圧 ec=Em sin(ωt-4π/3) として、a相電圧を基準にして考える。1サイクルを12等分して、その各状態のエネルギー量を比較する。

(2018/10/30)追記。以下の記事が間違っていたかもしれない。少し時間をかけ検討したい。各相電流の2乗の和の係数が3/2となる処を単に3と間違った。(2018/11/01)追記。誘導性負荷の記事の内容で筆者の計算間違いに気付き、混乱し大変迷惑を掛けたことお詫びいたします。一応三角関数の計算の係数3/4とすべきところを3/2と誤っていたので、訂正した。

誘導性(L)負荷のエネルギー

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誘導性(L)負荷とエネルギー分布 三相負荷に対して、相順ABCを図のように時計回りに配置した。位相3はa相電圧が最大値の時である。図の円外に矢印でベクトルを記した。そのベクトルeは別の記事での瞬時電力ベクトルの場合に関係する記号であるが、その位相に従って回転する空間ベクトルを付記して示した。e=√(3/2) (ea+eb+ec) であるが、ここでは瞬時ベクトル解析論とは回転方向が逆になっている。さて、図の様子を見れば、Lのエネルギー分布が反時計方向即ち電圧ベクトルの回転方向と逆向きに移動していると観れる。電圧1サイクルにエネルギーは逆相順で2サイクルとなっている。そのエネルギー量は総和で、Wl=(3/4)Em^2^/(ω^2^L)の一定値である。(2018/10/30追記) 係数が(3/2)でなくて(3/4)かも知れないと気付いたので計算の確認をする。wl(J)分布図も間違いかもしれない。(2018/11/01追記)Wlの係数を(3/4)に訂正した。wl(J)の分布図は正しかった。図では、そのエネルギー分布が1+2(1/4) の場合と2(3/4)の場合との二通りである。その円の半径1とは、全貯蔵エネルギーの2/3で、結局エネルギー量(1/2)Em^2^/(ω^2^L)の意味になる。

容量性(C)負荷の場合 コンデンサの場合のエネルギーの相間分布の様子をリアクトルと比較してみよう。

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容量性負荷のエネルギー分布 Lの場合と比べて電圧位相に対する様子が違う。当然の事であるが図で表現すると分かり易い。電源周期の2倍周期で負荷内でエネルギーが回転している。

抵抗負荷の電力分布 エネルギー変換消費要素の抵抗ではエネルギー量を捉えることは出来ない。電力分布で示す。

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抵抗の電力分布 電圧回転ベクトルe とやはり逆向きに電力分布が回転している。抵抗負荷については、そのエネルギーを捉えることが出来ない事も電気技術量(電圧、電流及び電力)の意味に不思議を思う。負荷抵抗はエネルギー変換機能要素だから、要素が吸収するエネルギーと放出(消費)するエネルギーがある平衡状態に在るからだ。

瞬時無効電力の算定法は如何にするか? この解決法が『瞬時電力理論』である。どんなに電圧、電流が変動しても瞬時の無効電力を算定できる。その解釈を電線路空間のエネルギー挙動から次の記事で考えてみたい。(2017/09/14)この負荷と無効電力についての基になる記事電気回路要素のエネルギー(数式と意味) (2016/08/16)がある。

(2017/07/14)追記 今年になって電気工学分野の電気回路解析を『エネルギー』からまとめて分かり易い解釈法は無いかと模索してきたが、次に記事でと言う予定にも辿りつけないでいる。電気回路の『時定数』の意味に改めて深い意味があることを知り、行き先未定の途上にある。(2017/09/14)何とかこの『時定数』に関する回路解析については時定数から観る電気現象及び時定数と回路問答にまとめた。

電気回路の電力とは何ですか?

(2020/4/19)追記。この記事から3年が経った。電力工学と言いながら、3年前でも良く電力の意味が今ほど分かっていなかった。電磁界と空間エネルギー (2020/4/18) にオームの法則と電線路空間内を伝播する空間エネルギーとの関係を論じた。『電子』概念を否定して初めて電力と言う概念の意味が理解できたように思う。

電気回路を考える時、電圧、電流及び電力と言う技術概念量を思い描く。電力に関係して力率などの用語も使われる。電気製品にはその消費電力の定格値が示されている。電子レンジでチンする時に、電力500Wか600Wかで加熱時間が違う。少し専門的になると、電力にも有効電力と無効電力がある。更にもう少し専門的になるとpq理論では瞬時虚電力などと言う用語も使われる。日常生活に関係しているにも拘らず、考えて見ると電力と言う意味が結構難しい事のように思われる。消費するのは電力(エネルギーの時間微分)ではなくて『エネルギー』なのである。消費電力量と言う言葉でエネルギーを単位キロワットアワー[kWH]で計算して電気料金を払っている。誠に巧い電気技術計測法が確立している訳である。電力とその消費時間の積を『ワットアワーメータ』積算電力計(アラゴの円板の原理)で計るのである。電圧にも電流にも、その概念には『エネルギー』が見えない。何故『エネルギー』が伝送されるのか。『エネルギー』は何が運ぶのか。まさか『電子』が背負い籠に入れて運ぶ訳ではなかろう。その『エネルギー』の時間微分が電力だ。
[問答 電力とは何か?] 電力の意味を『エネルギー』との関係で、実際の電線路上に於いてどのように解釈すべきか?
『瞬時虚電力』の不思議を考えながら、先ずはその手始めの問題として取り上げた。