タグ別アーカイブ: リサジュー図形

リサジュー図形と技術

リサジュー図形は技術評価の観測手段として有用である。オッシロスコープで3次元(時間と平面)図形として観測できる技術手法である。先日、記事整流回路とリサジュー図形が見られていた。そこに図5.スイッチングとリサジュー図形(e.i)がある。電流ベクトルiの描くリサジュー図形は6角形の頂点の6点を示す断続のリサジュー波形となる。その直流側の負荷は平滑リアクトルLが在るため、直流電流は一定値となる。三相交流電流波形は方形波である。その為電流のリサジュー図形が6点のみになり、6角形の辺は見えない筈だ。瞬時に6点にジャンプ移動する筈だから。今回リサジュー図形の意味を理解するのに参考になるかと少し追加して置きたい。この三相全波整流回路で、負荷がリアクトルL=0で、抵抗のみの場合は電源側の電流も波を打つ

変動波形となる。この場合の瞬時空間ベクトルのリサジュー図形で、電流ベクトルi に変化が現れる。その時のリサジュー図形を示す。a、bおよびc相の電流瞬時値ia、ibおよびicの値から図のように6角形の頂点に臍のような軌跡が現れる。

 

 

 

 

 

 

この電流ベクトルリサジュー図形に似た波形が在る。pq理論のリサジュー波形を見つけて (2014/11/21)の写真②に似た波形が在る。この写真波形は、後に空間瞬時ベクトル解析法と交直変換器への適用 (2011/10/30)と言う研究会資料になった基である。この研究会資料のp.77~p.79 の3次元軌跡図はリサジュー図形である。電力系統監視システムとして有効な手法と考えた。電力系統の状態を瞬時監視手法として生かされる筈だ。系統の瞬時アドミッタンス値と言う捉え方は余りなかった手法と思う。しかし、諸般の事情によりもっと大事な『静電界は磁界を伴う』の物理学基礎概念への方向転換になり、大学の講座性も工業高校と同じような気分で意識なく、研究能力の欠落かと、人権侵害の中に居るとは知らず、非常識の立ち位置から居場所も無く頓挫した。昭和62年、63年に電磁界理論研究会で、 電磁エネルギーの発生・伝播・反射および吸収に関する考察(EMT-87-106) と 瞬時電磁界理論の実験的検証とその意義 (EMT-88-145) を発表した。それはパワーエレクトロニクスの電力部門の講座に所属する内容ではなかった事を後で理解したが、無我夢中の夢の中のこと。 考えてみれば、昭和39年から、新潟県教育委員会はじめ、採用説明会と事務の取り扱いを一度も受けた経験が無かった。共済組合の加入手続きも書類に記載し印鑑の捺印など、一切した事も無かった。しかしそんな中で30年、50年以上の思考で、不可解な電荷の物理学の本質に辿りついた。研究者の端くれとしての責任と社会への貢献の一部は果たせたかと。

電気工学とリサジュー図形としてはピタゴラスの定理とオイラーの公式そして電気ベクトル (2017/01/15) 、ソーヤータワー回路の謎 (2016/07/19) さらに励磁電流とは? (2019/04/14) および変圧器-物理学解剖論- (2011/09/13)などを過去の記事から拾っておく。

pq理論と瞬時空間ベクトル。そのリサジュー図形を理解するには少し専門的な意味を理解する必要があろう。三相交流瞬時空間ベクトル (2017/04/07)  および単相瞬時空間ベクトルと瞬時値 (2017/03/04) が参考になるか。三相交流に瞬時虚電力qのベクトルを導入したことで、電気ベクトル空間座標が時間と合わせて4次元座標となった。

励磁電流とは?

(2020/06/13) 追記。“Electrons”の紋所と科学理論 (2020/04/07) と The electron did not exist in the world. (2020/05/15) 。

励磁電流否定の記事 変圧器の技術と物理 を投稿して。

(2019/04/16)追記。何処でも磁気や磁束は励磁電流で論じられる。元々電線の中に電子など流れていないにも拘らず、磁束まで電流との関係で定義される。ファラディーの法則の式を見れば、磁束と電圧の関係しかない。電流に因って磁束が発生するという意味など、その式には無いのだ。自然科学が科学技術理論で固められ、物理学としての自然哲学が欠落している処に理論の矛盾が放置されて来たと考える。

磁荷特性と電圧時間積分。

変圧器を例に、巻線の1ターンコイル電圧 eu [v] = v/n [v] (nは巻数)を基準にして考えることを提案した。磁束や励磁電流という技術概念についても、長い技術的評価手法となっている伝統的な磁化特性を取り上げ、その意味の電圧時間積分との関係での解釈を図に示す。コイルの電圧という意味はコイル巻線導体近傍の空間に分布したエネルギー量の技術評価概念なのである。複雑な概念量を統一して捉えることが自然科学論としての未来の姿でなければならない。それを可能にするのは『エネルギー』しかない。励磁電流という曖昧な技術量を見極めて、磁束とは何かを考えて欲しい。なお、磁化特性は鉄心材料によって、図の①や②のように異なる。変圧器などでは特性が良く①に近く、インダクタンスはL[H]無限大とも見られよう。インダクタンスはその電気器具のエネルギー貯蔵機能を評価する空間特性の評価概念である。(2019/05/08)上の図を訂正した。磁束φと磁束鎖交数ψ=nφで、コイル巻数nの関係を訂正した。

気掛かりで、励磁電流とは?とITで検索してみた。1970,000件も記事が有り、様々な解説記事が検索される。変圧器をはじめ発電機あるいは電動機などすべての磁束の発生原理として、アンペアの法則の磁界発生原理で解説されている。変圧器の技術と物理で、せめて磁束発生原因の励磁電流という間違いはやめるべきだと指摘した。50年も前(正確には生命の危機を脱した、昭和46年秋に研究補助を頂いて、ロイヤーインバータでの単相誘導電動機の周波数制御運転をして、産業教育振興中央会の「産業教育に関する特別研究成果 別冊」に載せて頂いた頃)に筆者は既に励磁電流を否定していた。変圧器突入電流という電源投入時の現象も投入位相で電圧零時であれば、設計磁束の2倍程の ∫vdt [Wb=(HJ)^1/2^] の磁束量になるからと『電圧時間積分』で解釈すべきである。

整流回路とリサジュー図形

遥か昔々の話になるが、大学の学園紛争の頃に半年間の内地留学(東京工業大学、宮入・片岡研究室)でパワーエレクトロニクスという半導体素子での電力制御や動力制御の最先端の学術研究の雰囲気を経験する機会に恵まれた。電気回路の深い意味を解析する電気技術の魅力に傾倒し、基本回路動作を実験を通して確認する事が出来た。最初が電力半導体整流回路であり、それが末尾の文献である。当時既にトランジスタで汎用の電動機を制御したり、鉱石運搬巨大車両を制御するアメリカの最新技術に驚嘆した。その頃高等学校の電気実習でも、半導体素子に因る電動機制御を採りいれるべきと勝手に思い込んで、学習指導要領の内容にそぐわない生徒実習を行っていた当時を苦笑する。正弦波交流回路だけでは、伝統的業績・過去の法則尊崇の念に縛られて、電気回路現象の奥に秘められた『エネルギー』感覚は身に付かないと思う。その正弦波をスイッチングすることで、はじめて回路内の『エネルギー』処理の意味が感覚的に理解できる筈だ。その『エネルギー』には決して質量は関係していない事を理解し、物理学の質量に依存した『エネルギー』感覚から脱却できる手掛かりになろう。今回は、30年程前に考えた電力系統の制御・監視システムの瞬時電力理論でのリサジュー図形の意味を基本的なところで復習しておこうと考えた。初心者の理解に役立てば良いのだが。
三相全波整流回路 電気回路技術は半導体と言う分類に入る元素(シリコンやゲルマニューム)の存在とその特性に負う科学技術の微細構造素子の開発に因って現代社会構造が構築されたと言っても過言ではなかろう。電力回路技術の基本回路に整流回路が有る。    三相全波整流回路 6個のダイオードを繋ぐだけで、三相交流から直流電圧に変換できる。電源が三相平衡電圧ea 、eb およびecとする。線間電圧実効値Vとする。直流電圧の平均値Vdは1.35Vとなる。半導体素子のダイオードは何の制御機能もないが、その両端に掛かる電圧極性だけで、自動的にスイッチング動作をする極めて便利な素子である。この回路動作を理解するには、半波整流回路でのダイオードのスイッチングを考えると良いかもしれない。蛇足ながら、p側ダイオードA,B and C とn側のA’ ,B’ and C’ のスイッチングに分けて考える事にしよう。

p側ダイオード素子のオン区間

    p側ダイオードのスイッチング 三相交流電圧の内で一番電位の高い素子がオンする。その時他の素子には自動的に逆バイアスの電圧が掛ることになる。一つの素子がオンすれば、他の素子は必ずオフとなり、極めて回路動作が安全に保たれる訳である。n側ダイオードも同様に素子の電圧極性で、自動的にn点に電源電圧の最も低い電圧の相の電位が繋がる。

オン素子と整流電圧

オン素子と直流電圧 電源電圧の最大値の相と最低値の相が自動的にダイオードのスイッチングで、プラスのp点とマイナスのn点につながる。その結果、線間電圧で最大値の相が負荷側の直流電圧となって現れる。図3に示したようになる。直流電圧も電源周波数の6倍の微小変動の波形であるが、リアクトルが有ると負荷抵抗には平滑された電圧波形のVdが掛ることになる。

オン素子と電流

導通素子と電流波形 三相のダイオードと電流波形を色分けして示した。三相交流電流ia、 ibおよび ic は電圧波形が正弦波であるにも拘らず、矩形波電流となる。しかも導通区間2π/3の波形である。この電流波形になる訳は何が原因か?電源電圧波形が正弦波でありながら、各相電流波形は急峻に直流電流値Idに立ち上り、一定電流のまま2π/3流れて再び瞬時に零になる。この原因はすべて直流負荷側の(平滑)リアクトルLの『エネルギー』貯蔵に関わっている。その『エネルギー』には決して質量等関係しない事を物理教育で指導しているだろうか。この『エネルギー』は光の『エネルギー』と何も違わない『エネルギー』と言う実在物理量なのである。リアクトルは『エネルギー』に対して貯蔵するにも、放出するに、その変化に抵抗する機能が強い回路素子である。整流回路の整流作用が瞬時的応答でダイオードの優れたスイッチング機能が発揮される訳にリアクトルの特性が関わっていると観ることもできよう。

リサジュ―図形と瞬時空間ベクトル 上の図4の電源側の三相交流電流は特徴的な波形であり、電力供給側の電源にしてみればその電流が系統にどのような影響を及ぼすかを捉えておかなければならない問題であろう。その特徴的な波形であるから、単に線路電流波形を観測するだけでは物足りなくは無いかと思う。電源側でそれが三相整流回路負荷に因る物と観測できれば、観測・制御に有効であろうと考える。その電流波形の特徴をリサジュー図形で示してみよう。これは30年程前に手掛けて諸般の事情で頓挫した考えでもある。その後利用されているかどうかは、筆者は関わった事が無いので分からない。

スイッチングとリサジュー図形 電気回路現象をリサジュー図形上で判断・認識する手法。ここで取上げた三相整流回路は電源に線路インピーダンスが無い特殊な場合ではあるが、線路電流が特別な波形であることから、瞬時電力理論の空間ベクトルの軌跡をリサジュー図形で観測すれば六角形を示す。六角形と言っても電流ベクトル i は六角形の各頂点の静止ベクトルで、瞬時に次の頂点にジャンプし、六角形の線上には無い。電圧ベクトル e は電源電圧の角周波数 ω の一定速度で円周上の軌跡を描く。リサジュー図形はオッシロスコープの入力信号に三相ー二相変換情報を採りいれる必要があり、その基礎的理解が必要である。その意味を初心者でも理解できる解説が必要と思うので、別に改めて述べたい。ここでは、瞬時電力理論の空間ベクトルについては従来の電気理論ではなかなか理解し難いかもしれない。関連記事と30年前の資料を参考文献として挙げる。

(文献) 静止電力変換回路の基礎(1) (電力用半導体整流回路)  新潟県工業教育紀要 第7号 p.165.~179. (昭和46年)

この記事の中味で、測定データとして興味ある内容が載っている。誰も調べないだろうと言う意味で貴重に思える。第18図 ωoとα、βの関係 のグラフである。この単相半波整流回路は実用性の全く無い回路の実験データではあるが。ωoは負荷のL/Rで、驚いたことにこれが『時定数』であり、今年の回路解析の記事に通じている。単相半波整流回路はリアクトルの『エネルギー』の意味を理解するには良い回路だ。その記事を抜粋して載せさせてもらう。

消弧遅れ角の実験結果 既に『時定数』が回路動作を決めると考えていたようだ。

(参考文献) 空間瞬時ベクトルと交直変換器への適用 電気学会 電力技術研究会資料 PE-86-39 p.71.(1986)

(参考記事) 三相交流瞬時空間ベクトル (2017/04/07)

三相交流瞬時空間ベクトル

はじめに 電気現象を理解するには、先ず『電気エネルギー』とは何かを知って欲しい。現在の教科書にはその基本が示されていない。だから専門家にこそ理解して欲しい。決して『電荷』論では理解できない筈だ。電気エネルギーは電線路を張り巡らすことで、どこにでも供給できる目に見えない不思議な『エネルギー』である。『電荷』が流れると言われても、その『電荷』はどのように『エネルギー』を運ぶと言うかの説明ができるのか。不思議と言う意味は、教科書で説明されていないから殆ど教えられていないと言う人間の思考上の不思議と言う意味をも含んでのことである。科学論の不思議は人間の不思議でもある。このような文章も本当にその意味が伝えられるかと言う疑問がある。この『エネルギー』は全く質量など無関係で空間に存在するものであると言う意味を理解して貰わなければ、上の文章の意味が伝わらないと言うことである。この『エネルギー』の意味を物理学という学問で認識しているのかという疑念があるのだ。物理学という理科あるいは自然科学の根本原理であると考えられている学問分野で、『エネルギー』という用語の本質を捉えていないという現実をみんなに理解して、教育のあり方を考えて欲しいと願う。今までに論じた『電荷』否定の関連記事を挙げさせて頂く。クーロンの法則を斬る ドアノブの火花ー熱電変換ー 雷は熱爆発だ 『電荷』否定への道など。

三相交流回路の電気現象 三相交流回路の電気現象を理解するには、その三本の導線で供給する『エネルギー』が基本的には直流の一定値であると言うことを知って欲しい。二本の導線で供給する単相交流回路の三倍の『エネルギー』を導線一本追加するだけで可能だと言う技術的効率の有効性を。すべて『エネルギー』に注目して欲しいのだ。その上で、瞬時電力理論で論じる瞬時空間ベクトル(文献1,2)とはどのような意味があるのかを説明してみたい。確かに制御するのは『電流』という電気技術量であるが、その目的は瞬時電力という『エネルギー』の時間微分量を制御しているのである。その『エネルギー』を効率良く伝送するには無駄を省きたいから、無効電力という厄介な『エネルギー』の流れを抑制したいと言う技術的手法として瞬時電力理論が提唱された。その理論は電気現象を瞬時空間ベクトル上で解釈する手法で理解し易いと言うことである。三相交流電圧が平衡の場合はその瞬時電圧の総和は常にゼロになる。しかし空間ベクトル上で表現すると、一定の回転速度の電圧ベクトル(文献3に基本説明)として捉えられることになる。何故そのようになるのかを初心者にも分かるように説明できたらと願う。

三相交流電圧

三相交流電圧三相交流電圧と位相 三本の導線で構成される電線路には、線間電圧と線路電流でその電気現象の状況を知るしか方法がない。電線路の空間には何も検出できるものはない。送電鉄塔の懸垂碍子の劣化状態を検査する検出(電圧、電界)器具などを子供(日本発送電株式会社の姿散宿所)の頃見た記憶があるが。需要家は線間電圧(vab、vbcおよびvca)しか使えないが、発電所の発電機は相電圧のStar結線で、相電圧(ea、ebおよびec)である。瞬時電力理論で解析する場合は、相電圧を基本に取り扱う。負荷は線間電圧負荷であるが、相電圧に変換して解釈する方が取り扱い易いからであろう。瞬時空間ベクトルでは基本的に相電圧に変換して取り扱う。変圧器をStar結線にして電圧を検出すれば、相電圧が得られる。また次のような線間電圧と相電圧の関係があるから、相電圧は算定できる。実際に電圧と電流の瞬時値を検出するには、電線路に変圧器(Tr.)や変流器(CT)を接続して測定することになる。

線間電圧と相電圧

三相ー二相座標 平面空間に三相と二相の電圧ベクトルを展開して解釈する。

単位ベクトルと三相ー二相座標単位ベクトルと座標 三相交流電圧が平衡であれば、位相が120度(2π/3)ずれた電圧である。そのA相、B相、C相の各相電圧を平面上に2π/3角度ずつ位相差を持つ軸を設定する。その軸上に単位ベクトルを設定して各相電圧の瞬時値を反映すると、その各電圧は平面上のベクトルとして捉えることができる。その各相電圧ベクトルのベクトル和を採ると、ベクトルes=ea+eb+ecが得られる。

三相電圧ベクトル 空間ベクトルの回転する意味が分かり難いかもしれないので少し説明をする。特別難しいことではないが、初めての人にも分かるようにと考えて、ただ具体的に突き詰めて見ることで分かると言うことを示したい。

空間電圧ベクトルの回転位相と電圧ベクトルes 三相の電圧位相(時間t)の経過に従って、各相の瞬時値をベクトル軸上に投影してみる。A相の電圧を基準にして、ωt=0の時刻ではB相電圧は負、C相電圧は正でA相電圧はゼロである。その状態の電圧分布が0あるいは12の位相の場合に当たる。位相を12等分して一サイクルとすると、丁度電圧ベクトルesは一回転する。

三相電圧ベクトルes  総和電圧ベクトルesは相電圧の最大値をEmとすれば、その大きさ(3/2)Emの回転ベクトルesとして捉えられる。図はある時刻ωtでの様子を示した。

二相電圧・電流ベクトル 標準的な理論は三相交流を二相座標上に変換して解釈する方法である。三相のままでは、その電圧と電流から電力系統に潜む電気エネルギーの本当の姿は捉え難いのである。二相座標変換解析法は優れて、技術と芸術の融合した手法にさえ思われる。電気現象の本質を理解するには三相交流回路の二相座標変換した空間ベクトルによる論考が欠かせなかろう。

二相電圧・電流ベクトル 三相電圧・電流ベクトルをα―β二相座標上に分解したものである。ただし『エネルギー』あるいは電力値との整合性を得るための変換係数√(2/3)倍となる。電圧ベクトルeeαの直交電圧ベクトルの和に分解できる。電流も同様である。なお、この電圧ベクトルeの2乗はe^2^=V^2^となる。Vは線間電圧実効値。図には電流ベクトルiを電圧ベクトルeの同相分と直交分との二つに分離した意味も欲張って示した。α相の瞬時有効電流iαpと瞬時無効電流iαqの意味をも示した。以前単相交流電流の瞬時電流分離について論じた事が三相交流でも同じ意味で理解できる訳である。

瞬時空間ベクトルと瞬時電力 二相電圧・電流ベクトルに因る瞬時電力は次のように定義される。しばらくは文献3.のはじめの内容が参考になろう。(続く)ここにもう少し説明を加えようと考えたが他の記事で述べたい。

線間電圧と瞬時電力 上の二相空間ベクトル表現を三相線路の線間電圧によって表現すると次のようになる。二相瞬時空間ベクトルで基本的概念が理解できれば、実際上では三相電圧と電流で瞬時電力が評価・検出できるので、その意味を示す。

線間電圧と瞬時電力、瞬時電流 三相交流回路は線間電圧によって解釈するのが一般的である。瞬時電力のpおよびqは線間電圧で表現できる。従ってその電力から直ちに各相の瞬時有効電流及び瞬時無効電流も算定できる。三相回路の電流分離の意味である。

瞬時有効・無効電流 瞬時実電力pと瞬時虚電力qから線路電圧により直ちに三相各相の瞬時電流が算定できる。なおVは線間電圧の実効値である。この分離電流から各相の瞬時有効電力、瞬時無効電力も相電圧との関係で直ちに算定できる。

瞬時虚電力の意味 瞬時電力理論で最も重要な理論の要は瞬時虚電力qに集約されよう。電線路空間の『エネルギー流』で瞬時実電力pは電線路観測点で、電源側と負荷側の間での実際の流れを捉えた電力である。しかし瞬時虚電力qはpのような『エネルギー』の流れを評価する技術量ではない。観測点ではどちらにも流れている訳ではない。差引ゼロである。それが無効電力の意味である。しかし三相の三本の導線の導体近傍を『エネルギー』が流れているのである。いわゆる三本の導線で囲まれた空間内を『エネルギー』が循環して流れているのである。しかしその空間内をまとめてみれば、どちらに流れていると言う訳ではないのだ。差引ゼロである。その『エネルギー』の流れが無効電力という技術量の意味である。流れていない『エネルギー』の還流状態を評価する技術量が瞬時虚電力qという概念である。電線路空間内全体をまとめて観た時、『エネルギー』は電源と負荷間を往復する実際の流通量の実流と還流して差引ゼロの無効流(虚流)との二つしかない筈だ。それで全ての『エネルギー流』を捉えた筈だ。電線路空間内の『エネルギー』を認識することにより、その電気現象の状況が分かり易く捉えられると思う。『電荷』では電気現象を捉えられないと思う。当然『電流』概念でも十分分かったと納得できないだろう。すべては『エネルギー』の実在性を理解する事から始めたい。

まとめ (続く) 「三相交流回路の電圧」等の記事でまとめを追加したい。結局『電圧』という技術概念の意味を『エネルギー』でどう解釈するかという物理的問題、自然哲学になろうから。

(関連記事) 電気現象は『エネルギー』とその光速度伝播現象である。光と電線路空間のエネルギー分布・伝播に統合した解釈に至るまでの思考の主な関連記事を挙げておく。電流や電圧の電気工学概念と電磁気現象の物理学としての眞髄は異なるのである。物理学で『電荷』の否定できない電磁気学は理論としての物理学の存在意義が疑われる。電気工学としての瞬時空間ベクトル解析を論じるに、電線路空間を伝送する『エネルギー』の実在性を認識したうえで、ようやく今安心できる感覚に在る。8.は瞬時空間ベクトル解析の一つの具体例と言えよう。

  1. 新世界への扉ーコンデンサの磁界ー
  2. 光の速度と空間特性
  3. 光とは何か?-光量子像-
  4. 光速度は空間定数(H/m,F/m)で決まる
  5. 空間ベクトル解析と単位ベクトル
  6. 変圧器の奇想天外診断
  7. コンパスと砂鉄の心
  8. pq理論のリサジュー波形を見つけて

(文献)

  1. 赤木他:瞬時無効電力の一般化理論とその応用 電学論B 103,483 (昭58-7)
  2. H.Akagi,Y.Kanazawa and A.Nabae : Instantaneous Reactive Power Compensators Comprising Switching Devices without Energy Storage Components IEEE Trans.Ind.Appl.,Vol.IA20,no.3,1984,p.625. (恥ずかしながら、著者紹介欄で人の書き方をそのまま真似た為、助手の身分(実際は教官でなく事務官扱いだったかも知れない?)を間違った。)
  3. 金澤喜平、難波江章:電圧型PWM変換器を用いた瞬時無効電力補償装置の動作解析と設計法 電気学会、論文61-B 39 (昭61ー4)。
  4. 金澤:空間瞬時ベクトル解析法と交直変換器への適用 電気学会 電力技術研究会資料 PE-86-39 p.71.(1986/08/04)
  5. 金澤:『静電界は磁界を伴う』-この実験事実に基づく電磁界の本質- 昭和62年電気学会全国大会
  6. 金澤:電磁エネルギーの発生・伝播・反射および吸収に関する考察 電磁界理論研究会資料 EMT-87-106  (1987/10/08).
  7. 金澤:「瞬時電磁界理論の実験的検証とその意義」 電気学会電磁界理論研究会資料 EMT-88-145. (昭和63年10月)。

単相瞬時空間ベクトルと瞬時値

(2020/06/10) 追記。ここで取り上げる空間ベクトル解析はやはり電気工学の解析手法の話になる。電圧、電流を電気現象の解析手段の基礎概念としての取り扱いとなる。それはあくまでも科学技術論としての論法である。その意味は電気現象を電気物理として論理性を追究する科学論とは異なるものである。電気回路の物理現象は決して電圧と電流では、その論理性を持って解釈することは不可能である。何故なら、電気回路のエネルギー伝播現象は決して電線導体内には無関係で、その電線路で囲まれた空間しか伝播しないのであるから。オームの優れた法則も電気技術としての回路解析手法であり、自然現象としての物理的論理性はそこには無いのだ。しかし技術的回路解析にはとても優れた、貴重な手法である事に変わりはない。現在の電気回路現象に対する筆者の認識を一言述べさせて頂いた。

はじめに。 瞬時電力理論(pq理論)は三相交流回路に対してその威力を発揮する。当該理論は電力エネルギーの制御・補償で、スイッチング機能を伴うなど、絶えず瞬時変動する負荷に対して、その電気現象の意味を捉えるに欠かせない理論である。物理的には電荷に基づく電流は流れずと言いながら、ここでも電流の解説をしようとする。昔pq理論に基づいて、電流の微細制御を論じた論文「電圧型PWM変換器を用いた瞬時無効電力補償装置の動作解析と設計法」(電気学会)電学論B106,323(昭61-4)もある。この論文の意義は変換器の半導体素子のスイッチング動作限界を明らかにし、変換装置の設計基準を示した点にある。しかし瞬時電力理論は単相回路に対しては特別有用とは看做されていないだろう。単相では、三相回路での空間ベクトル積で定義される瞬時虚電力の概念が得られないからであろう。電気工学の学習でも、電気現象理解の初歩では、オームの法則から直流、単相交流回路と学習が進み、インピーダンスベクトルや電圧ベクトルの複素表現法によって電気現象解釈の目標に到達したと成るのじゃなかろうか。遥か昔の30年も前の学校現場での教育内容であるから間違っているかも知れない。もし教育内容が昔のままであるとしたら、三相交流での瞬時空間ベクトル解析法との隔たりが大き過ぎるだろうと懸念する。単相交流回路でも、瞬時空間ベクトル概念に依る解釈法を学習する必要があろうと思う。従来の複素ベクトル解釈法は負荷変動の無い、平均電力回路現象の理解を目的にした方法である。今回少し単相交流回路で、瞬時値に対する瞬時空間ベクトル解析法として理解に優れているだろうと思う方法を考えたので、『単相瞬時空間ベクトル解析法』を提案する。電気現象も瞬時空間ベクトルとしてみると芸術的に見えるから不思議だ。今電気現象をこのように感じるのも、いろいろの電気回路の中で起こる『エネルギー』の挙動に常に注意してきた結果のように思う。初めて電気回路の魅力に取りつかれたのは、1970年頃にパワーエレクトロニクスに出会ったからである。Principles of Inverter circuits  by B.D.Bedford ,R.G.Hoft の名著によって、電気回路技術の深さに興奮を覚えた。同時に電気理論に教育的矛盾のあることをこの頃に確信した。ファラディーの電磁誘導則とアンペアの磁束発生解釈の間の埋められない溝を何故誰も指摘しないのかであった。『磁束は電圧時間積分で決まる』その基本原理を!その意味を知ったのが『ロイヤーのインバーター』(静止電力変換回路の基礎(2)新潟県工業教育紀要第8号、このインバータで単相誘導電動機の速度制御を行った)である。この回路の動作原理を知れば、誰でも電圧時間積分の意味を理解できる。アンペアーの磁束発生原理はどこかに飛んで行ってしまう筈だ。これは物理学原理の根幹を問う問題でもある筈だ。伝統理論に偏り過ぎた理科教育はもっと技術に寄り添わなければ、存在意義が問われる筈だ。

単相瞬時空間ベクトルの要点。 単相交流回路の電気現象の瞬時の状況をどう捉えるかは殆ど論じられて来なかったのではないか。電源電圧が正弦波の場合だけに限って考えてみた。従来はインピーダンスベクトルに対して電流が流れた時、各負荷要素に掛かる電圧分担分を基本的考察の拠り所としていた。今回提案する解析論は負荷に対して、電流を電源電圧と同位相の成分と90度位相差の成分とに分離して考えた点が特異な観点である。その二つの瞬時電流の算術和は勿論回路電流の瞬時値に等しい。負荷が変動する場合、変動瞬時では電流は正弦波ではなくなるから、その過渡状態では解釈上でも分離は出来ない。三相瞬時電力理論とは違って、単相では過渡時に電流を分離する威力を発揮できないきらいはあるが、今のところ単相回路ではそれも止むを得ないと考える。ベクトルを扱う空間は4次元の抽象概念空間である。電源電圧が角周波数に従って一定速度で回転する電圧最大値のベクトルとして捉える。回転電圧ベクトルに対して電流は空間的な位相差を持ったベクトルとなる。

4次元座標と電圧ベクトル。 4次元座標は3次元の直交空間座標軸と時間から成る。この空間は実在空間とは異なることは当然である。電線路導体の空間は実在空間であるが、この座標は電気現象を解釈するための抽象化した空間である。三相伝送線路の瞬時電力理論の三相ー二相座標変換への橋渡しの意味を込めて、α軸とβ軸で構成した。

vec-1%e5%ba%a7%e6%a8%99%e3%81%a8%e9%9b%bb%e5%9c%a7%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab座標と電圧ベクトル。 三本の直交した座標軸α軸、β軸およびγ軸から成り立ち、その単位ベクトルをnα,nβ,nγ とする。電圧ベクトルe は最大値Emの正弦波で、時間の原点ωt=0を-nβ方向とする。電圧ベクトルはα軸とβ軸の成す平面上を反時計方向に回転する。この電圧ベクトルeの回転速度はαβ座標面に垂直なγ軸上に電源周波数の回転角速度ベクトルωを定義することにより決まる。単相交流回路には電圧が回転する現象がある訳ではないが、その電圧波形が正弦波の場合では、正弦波の周期性から電気現象を空間ベクトルの回転として捉えると電気特性を理解し易くなるだろうと思う。その座標と回転基準ベクトルとなる電圧ベクトルの解釈基準を示した。

瞬時電流ベクトルと瞬時値。 エネルギー消費負荷の内部インピーダンスは外部からは分からない。特性不明の負荷の電気現象を知る手掛かりは電圧と電流の瞬時値しかない。その事から電圧と電流の関係を空間ベクトルとして認識しようと言う事である。電流の瞬時値を電圧同相分と直交成分に分離し、その関係を空間ベクトルとして表現した。

vec-2%e7%9e%ac%e6%99%82%e7%a9%ba%e9%96%93%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab%e3%81%a8%e7%9e%ac%e6%99%82%e5%80%a4瞬時空間ベクトルと瞬時値。 空間ベクトル値が計測できる訳ではない。計測できる瞬時値はα軸上に下ろした垂線によって示された値となる。電圧瞬時値はeαであり、電流はiα が瞬時値として検出できるものである。計測できないが電流値i(電圧ベクトルeに位相差φで追従するベクトルiの値)を解釈上二つに分離した空間ベクトル上での電流ipは電圧瞬時値の位相に同相の瞬時有効電流になる。さらに同様な分離電流iqは電圧と位相π/2だけ異なる瞬時無効電流となる。電流の空間ベクトルについて、線路電流の瞬時電流ベクトルiは負荷特性によって決まる力率の位相φで電圧との関係が決まる。位相φは正弦波電流の場合の意味であり、単相回路の瞬時変動負荷に於いては電流ベクトル i は残念ながら確定できない。

瞬時電流分離の意義。 電流を瞬時有効電流ipと瞬時無効電流iqの二つの成分に分離することの意義は何か?確かに従来の抵抗とリアクタンスによる電気回路解析法に馴染んだ解釈法からすると、回路要素に依らない解釈が正しいのかと疑問に思うだろう。電圧と電流と言う科学技術概念量の魅力はほれぼれするものである。しかしその概念が、『電荷』と言う実在しない物理量によって解釈されることから、実際の電線路空間内に分布する『エネルギー』の自然の眞髄に気付かない事から来る、余りにも数式に厳密性で依存する科学理論が社会的な問題を含んでいないかと、それが気掛かりである。電線路近傍空間の『エネルギー』は電気現象の根底で、空間の空間定数によるインダクタンスやコンダクタンスの過渡的現象を大きく受けているのである。そんな自然現象の意味を数式で捉え切れるものではない。だから、前回の記事瞬時電力問答で疑問を呈した「Ri^2^の不可解」での関係で、瞬時有効電力との位相の差の問題に答えなければならなかろう。実際の負荷は抵抗とリアクタンスに厳密に分けられる訳でない。負荷は負荷空間全体が一体としてエネルギー処理に当たっているのである。だからこのエネルギーは抵抗分で、このエネルギーはリアクタンス分と分離することを実際上は厳密に分けなくて良いだろう。単相交流回路の負荷内で、リアクタンスに蓄えられた『エネルギー』が時間差を持って抵抗に消費される現象と考えれば、電流を二つの成分に分けて解釈しても何ら矛盾はない筈だ。『エネルギー』にとっては抵抗もリアクタンスも特別の差はないのだ。また電源から監視する技術面で見ても、電源側に影響するかどうかで評価すれば良い事であろう。だからと言って学習しないで良い訳ではなく、抵抗とリアクタンスの『エネルギー』に対する基本的特性の違いは十分理解していなければならない筈だ。この電流分離の意味を、前記事の具体例でもう一度確認したい。その前に一つ注意しておきたい。瞬時電流ipやiqの値が分離計測できる訳ではない。

%e7%9e%ac%e6%99%82%e6%9c%89%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e6%b5%81%e3%81%a8%e7%9e%ac%e6%99%82%e7%84%a1%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e6%b5%81瞬時有効電流ipと瞬時無効電流iq。 電源電圧に対して位相角φの遅れの線路電流iが流れる。Vec.2のベクトル図で、α軸電流iαがこの電流波形iとなる。Vec.2はα-β二相座標でベクトル展開したものであるが、それは三相回路の瞬時電力理論との関係で単相回路の電気現象を考えるためである。この具体的回路例をVec.2のベクトル場に対応して考えると、線間電圧vを三相回路のα相の相電圧eと考えればよいだろう。その上で、瞬時電力理論の瞬時有効電力p=(ei)のベクトルのスカラー積で解釈すると、p=eα・iα +eβ・iβの内の第1項分のeα・iαがそれに当たる。しかしこの電力は有効電力と無効電力の両方を含むものである。そこに、単相回路の空間ベクトルと三相回路の空間ベクトルでの解釈上に含む違いの意味を考えなければならなかろう。Vec.2の瞬時電流でのipとiqが確かに有効電力と無効電力を分離している意味で意義がある。

瞬時電力。 電気回路で計測できるのは線間電圧と線路電流である。その瞬時値を観測・計測するにも方法が必要だ。電圧は2本の電線に高抵抗(ほとんど電流が流れない程の抵抗値)か変圧器を繋いで、分圧電圧を利用する。電流の瞬時値はやはり電線に低抵抗(抵抗値ほぼゼロの電圧降下値)か変流器(CTと言う電流変成器)で測定するしかなかろう。制御回路では絶縁が基本だから、Tr.とCTが使われよう。その信号を波形観測機器で観測できよう。先のVec.2の空間ベクトルとの関係を示さなければならない。線路電流iは、i=iα(Vec.2のα軸上の成分になる)である。電圧vはv=eα(Vec.2のα軸上の電圧成分)の意味である。

%e7%9e%ac%e6%99%82%e6%9c%89%e5%8a%b9%e3%83%bb%e7%84%a1%e5%8a%b9%e9%9b%bb%e5%8a%9b瞬時有効電力p_p・瞬時無効電力p_q

前記事瞬時電力問答では「Ri^2^の不可解」と疑問を取上げたが、同様にリアクトルの電力Lidi/dt[W]も同じ意味を含んでいる。ここでの電流iもVec.2のベクトル図では、電流i=iα(α軸上の電流)、電圧v=eα(α軸上の電圧)であることを了解して頂きたい。瞬時電力p=vi[W]は

p=v ip +v iq =p_L + p_R  [W]

と各瞬時電力の和で、電流分離による電力の和も各要素電圧による電力の和も当然ながら同じくpに等しい。当然ながら、無効電力も有効電力もその次元はワット[W]である。従来の電力理論で言う無効電力は瞬時値を論じてはいないから、平均値の無効電力はゼロワット 0[W]となり、単位[Var]で零ワットの意味を表記するのである。無効電力VIsinφ[Var]とその無用なエネルギー流の関わりの悪影響の大きさを表記するのである。ただし、V,Iは電圧電流の実効値であり、最低でも1サイクルの2乗平均の平方根値で算定する訳で、瞬時値としての捉え方はない。だから瞬時電力pの平均値はP=VIcosφ[W]となる。それは瞬時有効電力p_p=v ip [W] およびRi^2^[W] の平均値に等しくなり、無効電力分は結果的に、エネルギー量の評価量としては表面に現れないのである。だから無効電力評価単位を[Var]とする。電気工学を学ぶ初期の方がよく質問しているので老婆心いや老爺心で単位について説明を。なお電力の単位ワット[W]についても瞬時値表現としては意味に明確さが見えなくなるのだ。ワットは[W=J/s]であり、エネルギー量の時間微分値である。電線路空間を伝送する『エネルギー』の時間微分とはどんな概念と理解すれば良いか。電線路を伝送するエネルギーは送電端と受電端では距離が離れているから、たとえ光速度で伝送されるとしても、その離れた場所での空間のエネルギー分布は異なる。その事は電流についても、一本の電線であっても送電端と受電端の離れた点では等しくないのである。この辺の論になると所謂物理現象、電磁現象を論じる内容につながる。

電力ベクトル。

vec-3%e9%9b%bb%e5%8a%9b%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab電力ベクトル。 α―β―γ空間ベクトル場で単相交流回路の電力を考えてみた。従来は三相交流回路に対してしか瞬時電力(瞬時電力理論)を考えなかっただろう。その研究分野から離れて30年もたったから実際のことは知らないが。単相交流回路を4次元空間ベクトル場で、その電気現象の解釈を試みた結果、新しい電気工学ベクトル解析の一手法になろうかと思うので報告する。こんな基礎的な内容が学校教育の教科書の中味を探ると見えて来ると言う事が驚くべきことに思える。従来の電力ベクトル図では、有効電力P=VIcosφ [W]と無効電力Q=VIsinφ [Var]を直角三角形のベクトル図として解釈していた。Vec.3 の電力ベクトルでは、

有効電力p=2P=2EIcosφ =Em Im cosφ [W] 、

無効電力q=2 Q=2EI sinφ =Em Im sinφ [Var]

となる。有効電力の算定値pは平均電力Pの2倍値となるから、少し注意する必要があろう。無効電力までが三相交流回路の場合と同じように算定されることが不思議だ。勿論無効電力Q=q/2と言う電力が流れている訳ではないのだ。それは三相回路における瞬時虚電力と同じような意味を単相回路ベクトルの中に捉えることが出来ると言う意味で、新しい認識を得たと言えるのだろうか。なお、E(=Em/√2)およびI(=Im/√2)は電圧、電流の実効値である。

まとめと考察。 回路の瞬時電力pαはpα=eα・iα [W] で、有効電力と無効電力の両方を含む。このα軸上の電流iαは電流計で計る回路電流の瞬時値iである。vec.2のベクトル図で、iα=ip+iq であり有効電流分ipと無効電流分iqの両方を含んでいる。ここで論じた事をまとめる。

vec-4%e7%a9%ba%e9%96%93%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab%e3%81%a8%e9%9b%bb%e5%8a%9bVec.4 空間ベクトルと電力(sinφの正・負に注意)。 単相回路の瞬時空間ベクトルを三相回路の瞬時電力理論と対比してみよう。電力ベクトルとして瞬時実電力に対応させて、電圧・電流のスカラー積p=(e・i)を計算すると、図の(6)式のように単相電力P=EIcosφの2倍となる。それはα相とβ相の二相分を計算したことになるからである。α相の単相分を計算すると、pαは(5)式の通り、単相回路の電圧と電流の積の瞬時電力となる。平均電力P=EIcosφに対しての2倍周期の正弦波電力となる。次に瞬時電力理論の瞬時虚電力に相当するベクトル積[e×i]=[×]+[×]を計算すると、q=2Qと従来の電力ベクトルの無効電力分Q=EI sinφ [Var]の2倍値となる。単相回路の場合はこの虚電力に関しては余り意味があるとは言えない事が分かる。三相回路では、瞬時有効電力は電圧電流のスカラー積で得られるが、単相のα相電力pαは有効電力と無効電力の両方を含んでいるので、有効電力と無効電力に分離することは出来ない事が分かる。しかし今回の考察で、単相回路の電圧と電流及び負荷力率角φから、空間ベクトル図上で有効電流ipと無効電流iqに容易に分離できることが分かった。Vec.4 図のp_p の(8)式およびp_qの(9)式である。具体例を挙げておこう。

%e5%9b%9e%e8%b7%af%e4%be%8b%e3%81%a8%e7%9e%ac%e6%99%82%e5%80%a4具体例と瞬時値。 α相の単相回路で、電圧、電流の実効値およびその位相差角φが分かると、その回路の瞬時値は確定できる。『問題』波形図で、位相ωt=2π/3 の時の瞬時空間ベクトル図はどのようになるでしょうか。

単相回路を空間ベクトルで考える手法について論じた。電気工学学習での一つの解釈法になればと思う。一つ留意しておきたい。三相回路の瞬時実電力pとここで論じた単相回路の瞬時有効電力p_pおよびpαとの間の関係についてはまだ十分分かっているとは言えないかも知れない。

ピタゴラスの定理とオイラーの公式そして電気ベクトル

ピタゴラスの定理は中学の算数の内容らしい。直角三角形の三辺の長さの間の関係の定理である。現実世界の寸法に照らし合わせて理解できる日常生活と結び付く、簡便で有用な定理だ。それに比して、オイラーの公式は複素平面と言う現実の世界には存在しない、見る事の出来ない数学特有の公式である。『虚数』は実在しない世界の概念である。電気工学でも、多く虚数は使われている。ウイキペディアにオイラーの公式が図形で説明されている。

%e3%83%94%e3%82%bf%e3%82%b4%e3%83%a9%e3%82%b9%e3%81%a8%e3%82%aa%e3%82%a4%e3%83%a9%e3%83%bcピタゴラスとオイラーの式の比較。 オイラーの公式の図はWikipediaの図形を参考にした。ただ、sin φに虚数記号 i (赤色文字で)を書き加えた。ピタゴラスの定理の各辺はすべて実数で、現実世界の数量を対象にした数式である。同じ直角三角形でも、オイラーの場合は一辺が虚数である。直交座標軸の縦軸が実数でなく虚数である。虚数はこの実世界に存在するものでなく、あくまでも非現実世界の表現量である。私は非現実的な数が現実の世界認識に有用な数であるとは理解できないのである。具象平面のピタゴラスの定理に対照してみたい。

z=e^iφ^ ,  x=cos φ ,  y=i sin φ

として、z,xおよびyの間にピタゴラスの定理を適用してみると、『虚数の2乗は-1』の大原則から、

|e^iφ^|=√(x^2^+y^2^)=√(cos^2^φ-sin^2^φ)

となる筈だが、虚数の原則は無視する不思議な数学的論理即ち、

y^2^=+sin^2^ φ

と決してマイナスに成らない論理が理解できないのだ。具象平面の現実世界にオイラーの公式の複素平面の数を対照すると、直角三角形の斜辺は他の二辺より大きいと言う実在世界認識に反する結果をもたらす。だからその時は虚数の原則は無視する論理に成るのかと思う。

『オイラーの公式の現実世界表現への価値はどこに在るのか?(命題)』と高等数学論理に弱い頭で考えてしまう。

さて、上の命題はそのままとして、実際に虚数記号(iあるいはj)は電気工学で多用される。折角であるから、平面2軸座標における電気工学の虚数利用上の特徴を考えてみよう。

%e8%99%9a%e6%95%b0%e3%81%a8%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab虚数とベクトル。 電気工学では虚数記号に j を使う。負荷インピーダンスベクトルZ=R+jωL と複素数表現をする。実軸の実数に抵抗Rとその垂直ベクトルを虚数で捉えてjωLと表現する。インピーダンスZと抵抗RおよびリアクタンスX=jωLの間に、直角三角形の図形評価で捉える。この回路では、R=ωLの場合として考えている。この場合の電圧を時間軸に展開して示せば、e 、e_rおよび e_lのように三つの正弦波形となり、その電圧ベクトルも虚数記号jに因って、インピーダンスベクトルと全く同一の直角三角形でベクトル図が描かれる。これらの直角三角形はその三辺の大きさは、ピタゴラスの定理の関係で捉えることに決まっている。だから虚数記号jによる複素平面解釈の電気工学理論が何故[j^2^=-1 の原則]が成り立たないのに伝統として確立しているのか。何故虚数jでなければならないのか。虚数の原則に気付くと、誤って合成インピーダンスZ=√(R^2^-(ωL)^2^)で有ったかな?と考えてしまう。

具象と抽象。 とかく科学技術理論はその世界(専門家)特有の概念によって共通理解の常識の世界認識で解釈している。上の例の正弦波波形表現も時間軸で展開して理解し易いように表現したものであろう。しかし実際にその状態は見ることは出来ない抽象化の表現であろう。オッシロスコープによる波形観測は掃引輝点の軌跡の残像(蛍光)に依るからだ。

%e5%85%b7%e8%b1%a1%e3%81%a8%e6%8a%bd%e8%b1%a1具象と抽象。 電圧もその瞬時値の連続として脳で認識する訳である。時間軸に展開した表現法は理解し易くしているだろう。しかしそれも一つの抽象化表現法と看做せよう。その抽象化の解釈法に虚数表現が取上げられよう。特別に虚数表現にしなければならない理由があるのだろうか。直交座標の取上げ方で合理的な方法があるのじゃなかろうか。

回転ベクトルと単位ベクトル。 実数軸と虚数軸での複素平面表現法に対して、実数の現実世界の数の概念の範囲で、電気工学に使われる便利な直交座標を考えてみよう。なお、この単位ベクトルについては空間ベクトル解析と単位ベクトルで述べている。

%e5%9b%9e%e8%bb%a2%e3%83%99%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%ab回転ベクトル。 単相交流回路で、電源電圧が正弦波とする。一つのやはり抽象化表現法ではあるが、電源電圧が時間的にどのような状態に在ると考えるかの具体例を考えた。互いに直交した二つの『単位ベクトル』naおよびnb を平面に設定する。

スカラー積は (nanb)=0 、ベクトル積は[na×nb]=nc   と平面に直交した単位ベクトルnc に成る。

上のように大きさ1の方向だけを決める単位ベクトルを設定することにより、平面上を回転する電圧ベクトルを表現することが出来る。電圧の平面上のベクトルe

e=Em(na sin ωt –nb cos ωt)

によって時間 t の経過に従って、電圧ベクトルの先端の軌跡が円を描く。オッシロスコープのリサジュー図形観測で得られるだろう。

電流ベクトル軌跡。 図の電流ベクトル軌跡は負荷変動があれば、その軌跡は複雑に変動軌跡を描くことになろう。一般には負荷変動が電圧波形の変動を生むから、電圧も円軌跡から外れるだろう。

電源電圧eを積分して- Em cos ωt をオッシロの縦軸入力(y)、電源電圧 e を横軸入力(x) とすれば円軌跡のリサジュー図形になろう。

奇妙な積分への疑問。 積分回路を通した信号は『時間t』での積分か、『角度ωt』での積分に成るのか?

この電圧円軌跡は後で、pq理論の瞬時虚電力での座標展開への予備的な意味を込めた。

電気工学理論の虚数概念に対する結論。 自然科学理論には様々な部門で虚数が使われているのだろう。電気工学理論では虚数記号に「j」が使われる。直角三角形の一辺を虚数で解釈する長い伝統によって電気工学理論は馴染み易い解析理論として定着している。上で論じたように、虚数は2乗によるマイナスの実数に変換される虚数論の原則との整合性で矛盾しているからと言うだけで、j記号の使用は悪いと言い切るのは浅はかであろう。直交したベクトル評価概念が電気工学理論として優れている事には間違いがない。ただ、実数軸と虚数軸で捉える表現法は虚数と言う実在物理量とは言い難い数であると言う点から、その二つの軸の物理量を共に実数とすれば合理的な論理展開で、伝統理論がそのまま生かせる。空間ベクトルの3次元座標の単位ベクトルをi 、 j およびk とするように設定すれば、何も虚数を必要とはしない。従って結論としては、[j]を単なる単位ベクトルと解釈すれば良い筈だ。

ソーヤータワー回路の謎

(2020/01/18)追記。もう少し追記しておきたい。図4.コンデンサの充電特性コンデンサの充電特性をリサジュ―図形で判断するという手法について、直接観測できないかと考えた。

図4.コンデンサ充電特性 基本的にコンデンサだけで、回路にシャント抵抗shを挿入した。抵抗値はほとんど無視できるほど小さい。その微小電圧をオッシロスコープ感度を挙げ、電源電圧vで掃引するリサジュ―図形を描けば、90度進相の電流なら図のような円形が得られる筈だ。同様にコンデンサの代わりにコイルであれば、描く方向が反対の円になる。強誘電体コンデンサでは、決して電流img109波形は正弦波には成らないだろう。その時リサジュ―波形にどのような歪が現れるか、波形の歪から特性を評価できないかと考えた。入力信号の感度のアンバランスが欠点ではあるが。

(修正加筆)観測器の感度アンバランスを軽減するため、掃引電圧値を抵抗で分圧した回路に修正した。分圧抵抗の比率最適値は不明。また変圧器での分圧も考えられる。

(2020/01/16)再追記。このソーヤータワー回路の最大の疑問と問題。特性評価の対象コンデンサは強誘電体の容量 C のコンデンサである。しかし、リサジュ―波形で観測する電圧波形は基準の容量の大きなコンデンサ Co の電圧 voの波形を観測している。電源電圧 v を掃引波形に使って、vo を観測する意味が理解できない。評価対象コンデンサの電圧波形 vc をリサジュ―波形には利用しないで、強誘電体コンデンサの特性が評価できるのか理解できない。

(2020/01/15)追記。ダッシュボードに挙がっていたので。

Sawyer tower 回路の意義は?コンデンサのリサジュ―図形への関心から記事にした。しかし電気回路論としては理解できなかった。コンデンサ回路機能として考えて観た。

コンデンサとは何か? 回路論としてコンデンサの機能を考えた時、電子回路と電力設備回路ではその捉え方に違いが有ろうが基本的には電気エネルギーの貯蔵機能である。電子回路では信号の遅れと言う感覚でも、やはりエネルギーの貯蔵による信号伝送遅延である。また信号伝達回路では小さな容量で直流電圧阻止用でカップリングにも使われ、この場合は信号遅れが無いようにするが。ソーヤータワー回路のコンデンサが二つ直列に繋がれた場合は、正弦波電圧に対して、位相が90度進んだ電流が流れることになる。コンデンサ容量が違っても、二つのコンデンサの電圧は電圧値が違っても、同じ位相の正弦波電圧となる。決して、ソーヤータワー回路のような働きをするコンデンサの機能は『電荷』概念からは考えられない。コンデンサC=ε(S/d) [F] の強誘電体ε[F/m]としても、電気理論のコンデンサ機能ではない。

誘電分極とは? 

誘電分極の解説を見ると、図2.にようにコンデンサの電極版の間の誘電体の分子がプラスとマイナスの電荷の変位を起こし、電極の電荷を中和するような説明になっている。この解釈は電極版の貯蔵電荷の役割を相殺してしまうのではないか。コンデンサには『電荷』が溜まった事には成らないと思う。もしこのように分子が電荷変位を起こしたとすると、それはどのように『エネルギー』が貯蔵されたと解釈すればよいのだろうか。一つの分子の『エネルギー』はどのような量と解釈するのか。『電荷』の変位に対するクーロン力ではどのような力の物理的基本である加速度概念が適用されるのか。また電荷変位は「位置エネルギー」とでも考えるのかそれとも特別の『エネルギー』が有るのだろうか。

コンデンサのエネルギー貯蔵

交流電圧の極性で、コンデンサへの『エネルギー』供給電線路が変る。今電源電圧の極性が図3.のようだとすれば、負側の電線路近傍を通して供給される。この回路図には『電荷』は必要が無い。ただ電源から『エネルギー』がコンデンサに供給されるだけである。その時、コンデンサの絶縁体・誘電体がどの様な特性であるかによって、コンデンサC1 とC2 に貯蔵される『エネルギー』の入射は全く自由に、その特性差に従ってなされるだけと解釈する。そのように考えた時、コンデンサの直列容量 C は電気理論のような合成の式では捉えきれないことになる。強誘電体などの特性はそれがその空間内の『エネルギー』の流れ方に影響を与える訳である。電力配電線路の絶縁電線路の特性で伝送特性が変る意味とも通じるのである。コンデンサ誘電体の材料や、回路電源周波数によって、コンデンサ機能は複雑な特性を示すはずである。『電荷』保存則からの解釈では理解できない筈である。以上、コンデンサ機能についてソーヤータワー回路の意義を考えた結果の追記である。

(2016/07/19)電気回路要素にコンデンサがある。コンデンサにも多種多様な物がある。コイルにも鉄心入りと空心でエネルギー貯蔵特性が大きく異なる。コンデンサの場合も、その誘電体(絶縁体)の材料により大きく特性が異なる。その誘電体内に『エネルギー』が貯蔵される訳であるから(電荷による分極論の意味を理解できない)、誘電体分子の構造がその『エネルギー』貯蔵に特徴を示す筈である。そんな事から誘電体の分子空間構造を検索したら、ソーヤータワー回路に辿り着いた。今まで聞いた事もない回路名だ。誘電分極と磁気ループの話の途中に出会った。

ソーヤータワー回路

ソーヤータワー回路ソーヤータワー回路 コンデンサCが強誘電体という材料のコンデンサらしい。その特性をリサジュー図形としてオッシロスコープで観測する手法のようだ。この回路とそのリサジュー図形を見て驚いた。二つのコンデンサが直列に繋がれた回路に交流電圧を掛けると磁気ヒステリシス曲線と同じリサジュー図形が観測されると言うことのようだ。そんな電気理論は筆者の頭の中の電気回路理論体系と整合しないのである。そこでこの回路の原理は?と検索してみた。幾つかの意味を尋ねる質問があり、それに答える回答者もいる。しかしその回答内容も理解できないものだけである。ソーヤータワー回路と命名されているから、誘電体特性の評価判定技術として利用されているのだろう。オッシロスコープのリサジュー図形がヒステリシス特性を示すと言う事は、決して電気回路のコンデンサ特性には表れない現象である。強誘電体がコンデンサ回路とは異なる特性機能を持っているから観測される結果であることを示している。そこでそんなヒステリシス特性を示すにはどんな入力信号であろうかと考えてみた。

ヒステリシスリサジュー図形 幾つかの波形例を挙げてみた。リサジュー図形とオッシロスコープの入力信号との関係を簡単に示したい。

周期波形例波形例 周期関数の正弦波y0=sin ωtを基準波形として、オッシロスコープの時間軸(横軸)掃引波形とする。

リサジュー図形

波形とリサジュ―図形リサジュー図形例 上の波形例のそれぞれをオッシロスコープの縦軸入力信号とした場合のリサジュー図形を示した。ソーヤータワー回路の観測例に近い波形は④の場合が相当しよう。ソーヤータワー回路のコンデンサC0の電圧v0が相当特殊な波形でないと④のヒステリシス図形は得られない筈だ。実際のソーヤータワー回路の実験回路では、電源電圧周波数や電圧値等幾つもの条件を満たす必要があるだろう。しかもy入力信号の電圧v0は小さい値であろう。

動作波形例(想定図) オッシロスコープに見られるリサジュー図形になるには、y軸入力信号波形は④のような波形の信号でなければならない筈だ。

ソーヤータワー回路の波形想定動作波形 検出y軸入力信号電圧v0から強誘電体コンデンサの電圧波形はほぼ電源電圧に近い波形であるが、v0の電圧分だけ波形ひずみがあると解釈した。電流波形はコンデンサの正弦波形ではない筈だ。ここまでの想定解釈はあくまでも、リサジュー図形を見ての絞り込みの判断である。結論として今のところ、強誘電体の電気特性を判断するだけの知識を持っていないので、謎のままである。ただリサジュー図形の意味は日常の遊び心で理解できるだろうから、その辺から強誘電体の特性をリサジュー図形に照らして考えてみた。科学には日常生活に根ざした遊び心が必要であろう。

pq理論のリサジュー波形を見つけて

本箱(木製自作、釘なし組み込み書棚、約160cm×190cm)にくすぶっている古い研究ノートをひろげてみた。一体何の意味があって、研究をしていたのか今考えても、自分の所業を理解できない。ただ無為の時間を已むに已まれず、何かを求めて心の遣る瀬無さを紙とペンにぶつけていただけかも知れない。

とても古いリポート用紙の計算記録が出て来た。ファイルの表紙に1984年(昭和59年)とだけ記されている。その中に意味不明の写真が載っている。pq理論(瞬時実電力・虚電力理論)の意味を追究していた長岡技術科学大学での物のようだ。とても面白い波形であるので、折角だから投稿しておく。

pq理論の?pq理論の?

p,q,ip,q,i

pp

qq

以上の4枚の写真である。多分第6高調波のp、q等の軌跡であろうが、系統負荷アドミッタンスなどと記されているから、科学研究費申請用の基礎資料だったかもしれない。いつか計算資料の意味が理解出来たら、データ写真の意味を説明できるかもしれない。

空間瞬時ベクトル解析法と交直変換器への適用

古くて、捨てられた過去を背負って、しかも未練がましく、いつ迄も参考文献に挙げる「研究会資料」がある。当時を思い返すから避けたいものである。しかし、当時の電力技術理論と電気磁気学理論との統合に思いを馳せていた内容である。「複素数を解剖する」で複素平面でなく、4次元空間の例題として本論文が参考になろう。ここで、その電力技術開発に思い残したままの内容を示す。

誤字訂正「捕える→捉える」。当時は、長岡技術科学大学からも邪魔者として捨てられた事も知らずに、一人で頑張っていた。「馬鹿と利口は紙一重」と教授に陰口をたたかれている事も知らずに居た。呑気でおバカさんを今に成って噛み締めている。技術科学大学にもたった一度初代学長川上正光先生の講演以外に行く精神的余裕などなかった。なお、昭和62年2月下旬に、技術科学大学に戻るのをやめるように説得された。何の意味かも理解できずに、初志貫徹で、『以下余白』の不覚の墓穴に至った訳である。新潟県教育行政の過去と未来ー犯罪?ーがその事例だ。この過去の処理をする術を持たない自分には何の役にも立てない。昭和24年4月の行政の日本国憲法に従わない戦後処理にも原因があるか?。

(2017/06/06)訂正。一つ記事の内容を訂正させて頂く。ページ-74-に誤りがあることに気付いた。今年に成って、三相瞬時空間ベクトルの意味を考え直してみた。もう30年以上も考えずに過ごしたことであるが、今になって内容を見直して大変な勘違いに気付いた。サセプタンスと電流分離の関係を考えて気付いた。この間違いは図15の(c)にも言えることである。この(c)の場合は電圧ベクトルe と e_con_の採り方の混乱からの結果である。

変圧器ー物理学解剖論ー

技術法則としての原理 電気エネルギーの利用が可能に成り、急速に技術革新が進んだ。その送配電が交流方式という事で、便利さが格段に電気事業の拡大を進め、そのエネルギー無しの生活は考えられない時代となった。その電気エネルギーの送配電には「変圧器」が欠かせない主要な機器である。電気現象を科学的に捉えたのは、1831年頃の『ファラディーの電磁誘導の発見』に遡ろう。その電磁誘導の法則が変圧器の動作原理として、物理学の教科書の基本を成している。標題でー物理学解剖論ーと副題を付けた。ここで解説しようとする事は物理学教科書の内容を説明するのではない。ファラディーの電磁誘導則の矛盾解説である。変圧器の動作原理を深く突き詰めて、その意味を解剖して明らかにしようとするものである。従って、受験のための学習者即ち受験試験成績の得点には極めて不都合で逆効果の、効率の悪い解説である。教科書が間違っている事は自然科学全体の未来への大きな課題である。しかし、『真理は安易な学習では到達できない』事の意味をも含めた解説ではある。先ずは、技術法則として有用である事に変わりはないので、『ファラディーの電磁誘導則』から変圧器の意味を考えてみよう。二つのコイルを近付けておく。その一方のコイルに電圧を印加する。ここで、教科書では電圧を掛けたコイルに「励磁電流」と言う磁束を作る為の電流が流れると解説される。しかし、技術法則としては、原理的には電流で磁束が出来ると言うのは、論理的に説得力に欠ける説明である。

電圧時間積分の意味 ①図で、コイル巻き数n_1_、磁束φ_1_および印加電圧e_1_として、その関係を表したのがファラディーの式である。その式には電流の値(変数)は入っていない。電圧と磁束の二つの変数の関係だけを表すのがその式である。ならば、式を変換して積分形式に表現しても同じ事である筈だ。それが①図の右下隅に示した表現式である。この式も当然のことながら、励磁電流と磁束の関係等何処にも示されていない。ファラディーの電磁誘導則から、途中に無駄な概念を追加する曖昧性の介在なしに、直接導かれた式である。説明の為に、新しい概念を追加して広げる事が現代物理学理論を迷走させた原因になっていると考える。そのような意味が、この「励磁電流」と言う不要な概念にも見えると言えよう。最後の結論としては、「磁束量」と言う概念さえも破棄しなければならない矛盾に論点が進むのであるが。しかしそこまで行く過程で、今は「磁束」の意味を取り入れて論を進める。ファラディーの法則は、電気磁気学の基礎理論として、変圧器の動作原理の解釈に長い間揺ぎ無い足掛かりを提供して来た有り難い法則である。電気理論で少なくとも変圧器の解釈に磁束概念を使うなら、励磁電流は使うべき概念ではない。①図は変圧器概念の説明の為、一次巻線と二次巻線で示した。しかし、空間に一次巻線のみが単独にある場合は、単にソレノイドコイルと言う普通のコイルになる。そのコイルに電圧を掛ければ、何となく電流が流れ過ぎて、コイルが焼け切れると心配になる。その疑問・心配が電気を扱う上での重要な感覚なのである。その疑問が感じられる事により、次の深い意味を知る切っ掛けに繋がるのであろう。『問答』とは『問う事』が次の事初めに大切である。問わない人に『答』は用意されない。電圧時間積分と言う意味が少し理解出来る事に繋がると思う。コイルに電圧を印加した時、磁束量は電圧の大きさ、およびその電圧の時間的に変化する周期や波形で決まるのである。もし交流電圧のサイクルが極めて短い時間で、正負に切り替えられるならば、相当高い電圧でもコイルが焼け切れるような事はない筈だ。1万サイクルなどの高周波なら、多分コイルは有効な回路素子のインダクタンスとしての機能を発揮する事になるだろう。当然印加電圧がバッテリーのような直流なら、電源投入と同時に電気事故になる。直流電圧の時間積分でコイル内の『空間』はエネルギー貯蔵の限界を超える結果となる。空間定数値、空間透磁率μ=4π×10^-7^[H/m] の許容限界を超える自然の掟に逆らった行為であるから、許されないで、事故となる。ファラディーの電磁誘導則はそのまま、微分形式と積分形式で受け入れる事が重要である。励磁電流等に煩わされる学習上の無駄は不必要である。教育は、教科書初めその無駄が多くて、既存の教育業界を「考える教師像」から程遠い業界団体にしている。 写真400

磁束とリサジュー図形 技術法則として、鉄心磁束と電圧時間積分の関係の認識は重要である。変圧器の鉄心中の磁束がどの様に変化するかを観測する事で、その概念を理解する。一つの例として、インバーターが動作波形の理解に役立つだろうと思う。どんな方法で磁気特性を観測するかを参考に示しておこう。①-1に直流電圧e_1をスイッチ(トランジスタ)で切り替えて、コイルに印加すると、その磁束波形Φは直流電圧の時間積分として、一定勾配の直線状に変化する。切り替えで、磁束波形は結局三角状の波形となる。一応無負荷電流i_0(これが励磁電流と言う物になる)を示す。励磁電流は鉄心の磁気特性で決まると解釈されている。図では鉄心が省いてある。電流波形が磁束の変化に対応していない事を一定の電流値で殊更強調してある。スイッチングの切り替え点で電流が少し飛び出して、増加しているように赤く示した。それは後程鉄心の磁気特性で、起磁力(i_0)と磁束(Φ)の関係を示す『ヒステリシスループ』のリサジュー図形の説明のための準備である。ここでどのように磁束波形を観測するかを示そう。写真397変圧器の入力側に電圧時間積分検出の為の積分回路を追加する。コンデンサと抵抗の直列回路を電圧端子に付加すれば良い。抵抗R[Ω]の値とコンデンサC[F]の値で電圧の時間積分の周期、「時定数」と言う技術用語τ=RC[FΩ]が決まる。切り替えのスイッチング周期に対して、十分長めに、大きく取れば積分回路の役目をする。単位が[FΩ]=[sec(時間の秒)]になっている事はとても重要な単位系の認識を喚起するものである。

単位について、エネルギー[J(ジュール)]とJHFM単位系をご参照ください。

起磁力は電流が流れる回路にシャント抵抗SH(抵抗値殆どゼロ)を挿入して検出する。アース点G、yとx点をオッシロスコープの信号として観測する。その結果の波形が右図のように得られる。オッシロスコープの入力信号で、横軸の掃引信号にxを縦軸信号にyを選べば、鉄心の磁気特性が観測出来る。図の『ヒステリシスループ』で、鉄心の磁束レベルが丁度飽和する限界状態に在るものを示した。①ー1で、電流値が終端部で跳ね上がるように示したのは、磁気状態が飽和限界でスイッチングされている事を示した。それがヒステリシスループの赤い横にはみ出した部分に相当する。後で破棄する磁束概念を、ワザワザこんなに詳しく解説する意味があるかとお叱りを受けそうであるが、技術の現場の常識である事を考えれば、一応その点まで踏み込んでおかないと「磁束棄却」の意味が深く認識されないと考えたからである。以上で「磁束と電圧積分」の関係の解説は終わる。上のトランジスターインバーターのスイッチング動作については、ファラディ電磁誘導則・アンペア周回積分則の物理学的矛盾に述べてある。

(ヒステリシスループ観測上の留意点) 変圧器1次側、電源側に積分回路を設定する。変圧器2次側は無負荷で、負荷電流零である。積分回路のR,C等の定数の選定について。電源の周波数fサイクル。その1サイクルの時間、いわゆる周期TはT=1/f[s]となる。積分回路時定数τ=RC[s]は電源周波数fから、τ>5×T位で良いかと思う。コンデンサは無極性のコンデンサで、たとえばC=1[μF(マイクロファラッド)]を選んだとすれば、抵抗はR=100[kΩ]を選べば、τ=RC=100×10^3^×1×10^-6^=0.1[s]となる。もしf=50サイクルなら、T=20[ms]=0.02[s]であるから、τ=5×Tとなり、何とか積分値の磁束は得られるだろう。また、無負荷電流、いわゆる励磁電流と称する値ioは分流抵抗器で抵抗値が殆ど無いものでなければならない。分流器が無い場合は、1オーム以下の抵抗を何本か並列にして、出来るだけ小さい抵抗値を使えば測定可能と思う。電源周波数について、普通の交流電源のf=50,60サイクル等の場合には、上の設定値で巧く行くだろう。しかし、インバーターなどのスイッチング回路で、周波数が1[kHz]等と高い場合には、その周波数に合わせて、積分時定数τ=RC[s]を小さくする必要がある。以上蛇足かも知れないが、昔を思い出して追記する(2013/5/23)。

鉄心とコイル巻き数 さて、変圧器は空間に二つのコイルを配置しても、その機能を発揮できない。何が必要かと言うと、磁性材料の鉄心である。近年はレアメタルがとても貴重で、貿易問題にも発展している。携帯電話にも、その磁気特性が優れているため、無くてはならない素材と成っている。二つのコイル間の電磁結合を強めるにはコイルの中に鉄系の鉄心と言われる材料が必要だ。実際には、下手な図であるが、右の(ロ)のように一次と二次のコイルを出来るだけ密接に巻くのである。初めに、内側に二次コイル、その外から電圧を掛ける1次コイルを巻く。図に古いE,I鉄心を使って巻いた変圧器の概形を例示した。今はカットコアが有り、簡単に作り易くなった。この鉄心がどの様な意味を持っているかは、変圧器を作ると良く分かる。鉄心材料の磁気特性で、最大磁束密度と言う材質の特性がある。その値以上の磁束は受け付けられないという限界値である。設計式に、正弦波電圧の実効値Vボルト、周波数fヘルツ、コイル巻き数N、鉄心の断面積S㎡および最大磁束密度Bm[Wb/㎡]とすれば、V=4.44fNSBm(参考:4.44の係数は正弦波の積分による2π/√2=4.44の値である。その係数はインバーター等の方形波電圧では単に 4 で、V=4fNSBm となる。)がある。この条件を基準にしてコイルを巻けば変圧器として動作する事に成っている。(注意)変圧器の電源電圧を印加する1次コイルの巻数Nは上の式(V=4.44fNSBm)の巻数値Nより多ければ安全に動作する。その限界値が上に示した式である。その点を付け加えておく。さて、この鉄心がどの様な役目をするかと言う点は、技術論で論ずるならば特段説明を加える事も無いだろう。しかし、物理学解剖論としてはなかなか奥の深い事になるのである。磁束概念矛盾

磁束概念の棄却 上の③図は、学会の説明に使った資料かも知れない。変圧器の電磁誘導現象と同じように、磁石をコイル近傍で動かせば、コイルに電圧が誘導される。永久磁石はエネルギーの貯蔵体と見做せる。コイルにエネルギーを送り、コイルに繋いだ負荷でエネルギーを消費しても、磁石のエネルギー量は減らないようだ。先日不図不思議に思った。磁石(マグネット)はその磁極の近傍空間に、エネルギーを保持している。しかし、その空間のエネルギーはコイルの負荷にエネルギーを供給しても、無くなると言う事はないようだ。物理の基本に、『エネルギー保存則』がある。一通り理屈を付ければ、磁石を移動するにはそこでエネルギーを供給する事になる。その磁石移動のエネルギーの一部が負荷に供給されると解釈すれば良いのだろう。と言う事で今のところ納得する事にしている。自転車のランプはこんな磁石発電機(磁石を回転させて、周りのコイルに回転動力のエネルギーを伝える発電方式)だから、それで辻褄が合うだろうと。供給エネルギーが光のエネルギーに変換されるのである。エネルギーはさまざまなかたちで人の気付かない姿を演出しているのだ。磁束の破棄とその意味。図③で訴えたい事がそれである。その図に「磁束がコイルに鎖交する」が矛盾とある。他の投稿でも説明しているが、 div B = 0 [Wb/㎥] の意味が、磁場の基本的条件を規定している事である。磁束が通過する面積密度の量を磁束密度 ベクトルB [Wb/㎡] と言い、その距離微分を3次元空間全体で計算すると、どんな微小空間であっても、 B の微分値即ち磁束が微小空間当たりの体積から発散するものは無い。即ち磁場空間の何処でも、磁束の発散・発生する源は無い。即ち磁束量を表現する矢印の様な磁束に『頭』も『尾』も無い。と言うのが磁場、磁束密度の基本的に定義された概念なのである。磁束を使うなら、矢印で書き表せませんよと言う事を定義しているのである。div B =0 は磁界に対する基本的規定である。磁束を矢印で書き表す人は、磁気の基本概念(div B =0の意味)を理解していない人と言わなければならない。そこで考えるなら、コイル内に磁束がどの様に入り得るかと言う『問答』になる。頭の無い磁束はコイルを横から切って入り込む道は残されている。それはフレミングの右手の法則として知られている『発電機』の速度起電力を表す事になる。電磁気現象で、磁界とコイルの間の『起電力』に関するものには二つある。『速度起電力』と「変圧器起電力」の二つである。「変圧器起電力」は教科書ではコイルと磁束との間の『相対運動』に伴う電磁現象は無い事になっている。だからコイルを磁束が横から切りながら、コイル内に入る速度起電力の解釈はされていない。速度起電力も変圧器起電力も、本当は区別するべきものではないので磁束がコイルを切って入ると解釈すれば、一応磁束の面子も保たれてよいかも知れない。しかしそれだけでは、問題の解決には成らない。コイルと磁石間には『力』が働く。コイルに磁石を近付けると、負荷にエネルギーを供給するのだから、コイルが逃げようとする力が起きる。その力に抗して、コイルを抑えておく事で、初めて負荷に仕事が出来るのである。このコイルと磁石間の『力と仕事』の関係を合理的に解決する『問答』の『答』を出さなければならない。

磁石近傍のエネルギー流 さて、磁石の磁極近傍空間にエネルギーが在ると述べた。磁束概念を棄却するには、その代りになる何かを唱えなければならない。それが『エネルギー』である。磁束があるから空間にエネルギーがあるのではない。エネルギーが空間にあるから、そのエネルギーを磁束と言う仮想概念で、仮に解釈したら便利であると言うだけの理由で「磁束」を使っているのである。エネルギーの一面を捉える手法として磁束概念がある。物理学を学ぶと、電気磁気学と言う分野では、磁界の解釈に、解説に「磁束」が無ければどうにも収拾が付かない事になるのである。それでは磁束とは何かと『問答』を始めて見れば、何か良く分からないとなって、『答』が出ないのである。『電荷』と同じ不可解な闇に迷い込むのである。解決は、空間に実在する『エネルギー』しか他には無いのである。そのエネルギー流を④図に示す。

電磁力とエネルギー流 磁界の特色は磁石で示される『電磁力』の強さであろう。電動機と言う強力な機械的『動力源』にその特徴が示されていよう。磁石同士の間に働く電磁力は誰もがその強さを実感して居よう。磁極のNとSで、同一磁極間では反発力、異種極間では近い程強い吸引力が生じる。その磁力は、磁束ではどうにも巧く物理的理由の説明が付かない。NとS極を近付けた時、磁束概念では、接近する程強力な電磁力に成る訳の説明が出来ない。磁束が近い程太い線に成ると言う訳でもないから、磁束の状態による力の変化を説明できない。磁力が磁気のクーロン力で、解説されているが、それもニュートンの万有引力と同じ『遠隔作用力』の物理学的力の概念を踏襲したものである。磁気と言う「点磁極」の仮定そのものが磁場概念の div B = 0 を否定した解釈である。点磁極の存在はN、S極が単独に存在するという『モノポール』の説に従うものである。広い磁極面の間の電磁力に、そんなクーロン力で解釈することが許される訳は無い。右上に示した電磁力の解釈は空間エネルギーの回転流に基づく『近接作用力』である。エネルギーとエネルギーの流れる間の分布流の絡み合いで力が生じると解釈するものである。決して力の原因は、離れた点の『何か』の間に生じる『遠隔作用力』では無いと解釈する。これは、原子構造論にも及ぶ概念である。電荷間のクーロン力と言う『遠隔作用力』をも否定する考え方である。この力の意味をコイルと磁石の間に敷衍してみよう。S磁極にコイルを近付けたとする。コイルは磁気エネルギーの流れの影響を受ける事を拒否する。即ち反発力を産む。反発に逆らって近付ければ、如何にもコイルに電流が流れる如くに、エネルギー間の逆流の反発力を産む。しかし、コイル内のエネルギーの消費と共に、コイル周りも磁石のS極のエネルギー流の中に入ると考える。次にそこから、コイルを引き離そうとすれば、今度は今までと逆に、コイル周りに在るエネルギー流の減少を拒むべく、引き離す力に逆らう吸引力を生み出すと解釈する。

エネルギー流から見る変圧器の機能 磁束と言う概念の矛盾から、その否定を論じてきた。それでは変圧器の動作原理・動作機能をどのように解釈すべきが問われる。どのような物理学理論の根拠概念であろうと、矛盾が排除できない限りは、その概念に正当性は認められない。最後に残り、否定できない根拠概念は『エネルギー』そのものである。上に解釈を示したように、磁場とはその空間に実在するエネルギーの回転流であると言う以外真理には到達できない。従って、変圧器もそのエネルギー流に基づく動作機能を利用した電力技術機器と解釈しなければならない。その考え方を解説する為の説明概念図を⑤に示す。鉄心である『磁心』に絶縁物を介して、2次コイルを巻き、その上に1次コイルを巻く。その磁心断面図が(ロ)である。この断面図を見て、磁束を否定、棄却したら、磁心の機能をどのようなものと理解すれば良いかが『問答』の要点になる。ここには載せてないが、マグネット面の磁場模様を砂鉄で観察すれば、磁場は一様ではないと見なければならない。参考:磁界・磁気概念の本質に磁場論。また、「磁力密度 f=rot(S/v) 」日本物理学会講演概要集第63巻1号2分冊p.310 (2008.3.25) で式の解説も示した。磁場で、重要な認識はマグネット間のギャップを狭めるにつれ、その磁場強度は磁石の周辺部だけに集中的に強まる事である。(2019/04/15)追記。以下の#~# の部分については少し訂正する。鉄心(磁心)部の中心部には磁気エネルギーの影響がないだろうという解釈は間違っていた。鉄心断面積が設計上重要な意味を持つ訳は、そこにエネルギーが入り込むからと解釈すべきである。1次巻線の電圧時間積分としての電源電圧保持機能は鉄心中心部までの軸エネルギー流の入射余裕が鉄心の断面積を要求するからと解釈する。しかし鉄心内に磁極のNSが生じるという訳ではなかろう。鉄心磁区毎に隣同士で極性が交互に入れ替わると考える。だからファラディーの法則のような磁束の意味は当たらないだろう。エネルギーの貯蔵機能として鉄心が重要な意味を持っている。だから鉄心断面積が重要になる。 #マグネットの中心部での磁界・磁場は、砂鉄模様から判断するに、殆ど意味を成さないと解釈する。その事が変圧器の『磁心』の動作機能を解釈するに重要と観る。磁心の中心部は変圧器動作に於いて、コイル近傍の磁心表面でのエネルギー流に対する電磁現象が、その本質を秘めていると解釈する。交流電圧積分から考えて、鉄心材料の磁気特性で、磁心中心部までエネルギーが到達して、出入りする程周波数応答に優れた対応ができるとは考え難い。この点は、実験データなしで論ずる事に科学論で無いと言われることは承知している。しかし、エネルギー流の挙動特性と言う面から解釈すれば、そう看做さざるを得ない。現在の解釈では、磁心が1次コイルからのエネルギー入力を絶縁体の空間を通して、2次コイルへのエネルギーの橋渡しに重要な意味を持っている訳だから、その反射体としての役割を果たしているのであろうと結論付けている。#どのような詳細な機能を発揮しているかは、巧い実験を通して結果を得るより方法が無い。実験をするだけの経済的、社会的環境の得られない私がそれ以上論じる事は無理である。

(2016/10/27)追記。上に巧い実験方法がないと言ったが、巧い方法があった。変圧器の奇想天外診断を思い付いた。その実験により電線路を含めて、導体内を『電荷』あるいは『電子』が流れているのでなく、導体の近傍空間に『エネルギー』が分布し、それが電線路電圧の意味であり、物理現象であることを示す結果を得た。天晴れ(コイルと電圧とエネルギー)にデータをまとめた。